2025.10.31

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会社の忘年会「行きたくない」はアリ?はたらく人の本音から見える「職場のいま」

年末が近づくと話題にのぼる、会社の忘年会。「参加したくないけど、断りづらい……」そんな気持ちを抱えている人は少なくありません。この記事では、Job総研の調査データをもとに、忘年会をめぐる「はたらく人の本音」と、その背景にある職場文化の変化を読み解きます。

令和の忘年会の実態

日本の職場文化として長く親しまれてきた忘年会。コロナ禍を経て、その位置づけは大きく変わりつつあります。まずは、Job総研が実施した調査データをもとに、令和の忘年会事情を見ていきましょう。

忘年会を開催している企業は約7割

Job総研が実施した「2024年 忘年会意識調査」によると、2024年の職場忘年会の実施率は7割を超える結果となりました。

これは、コロナ禍前の水準を上回る数字。コロナ禍で中断を余儀なくされた忘年会ですが、5類移行から時間が経ち、多くの企業が再び開催に踏み切っていることがわかります。

一方で、この高い実施率は、必ずしも「参加者全員が望んでいる」ことを意味するわけではありません。後述するように参加意欲には個人差があり、世代によっても大きく異なる傾向が見られます。

忘年会への参加意欲|もっとも高いのは20代

同調査で忘年会への参加意欲を年代別に見てみると、「参加したい」と回答した割合がもっとも高かったのは20代でした。以下40代・30代・50代と続きます。

参加したい理由としては「同僚と親睦を深めたい」「対面で話す機会が欲しい」「上司との関係を構築したい」を挙げる声が上位を占める結果に。

コロナ禍で新社会人となった世代が、対面でのコミュニケーション機会を求めている背景が読みとれます。

忘年会の誘い。ためらってしまうのはなぜ?

忘年会が開催されると知って、「できれば参加したくない……」と感じる人は少なくありません。ここでは、「行きたくない」気持ちの正体を探ります。

自由参加でも「断れない空気」があるから

忘年会の案内には「自由参加」と書かれていても、実際には断りづらいと感じている人が大半。

JobQが実施したアンケートによると、「周りに合わせるために、本当は行きたくないランチや飲み会に行った経験がある」と回答した人は75%に達しました。形式上は任意参加であっても、「上司の目が気になる」「自分だけ欠席すると評価に響くのでは」という不安から、断る選択肢を持てない人が多いのが実情です。

義務ではないはずの場が、いつの間にか「参加しなければならないもの」に変わってしまう。この見えない圧力が、忘年会への参加をためらう大きな理由となっています。

仕事とプライベートの境界がはっきりしつつあるから

コロナ禍を経て、はたらき方や人との距離の取り方は大きく変化しました。「仕事との距離感」が改めて見直されるなかで、「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と割り切る人が増えています。

Job総研の「2023年 忘年会意識調査」では、忘年会に参加したくない理由として「気を使うのが疲れる」(36.7%)、「特に必要性を感じない」(33.8%)が上位に。

この結果からは、忘年会が「親睦を深める場」として機能している一方、「仕事の延長」「義務的なイベント」と捉える人も多いことがわかります。

価値観が多様化するいま、忘年会そのものの意義が問い直されているのかもしれません。

「行きたくない」と思いながら参加する人の心理

行きたくないと思いながらも結局は忘年会に参加してしまう、そんな経験を持つ人は多いもの。ここでは、参加を選んでしまう人たちの複雑な心理を見ていきましょう。

「断ることに罪悪感を覚えてしまう」

忘年会を断ることで、「冷たい人だと思われるかも」「協調性がないと見なされるのでは」という不安を感じる人は少なくありません。

特に日本の職場文化では、チームの和を乱さないことが重視されてしまいがち。自分の気持ちよりも周囲への配慮が優先され、断ることに罪悪感を覚えてしまうのです。

「みんなが参加するなら自分も行かなければ」という同調圧力は、断ることへの後ろめたさにつながります。結果として、本当は行きたくない忘年会への参加を余儀なくされてしまうことに……。

「人間関係を壊したくない」

職場での人間関係は、日々の仕事をスムーズに進めるうえで欠かせないもの。忘年会を断ることで「関係が気まずくなるのでは」「今後の仕事に影響が出たらどうしよう」と心配する声は多く聞かれます。

特に上司や先輩からの誘いの場合、断りにくさは一層強いものに。「付き合いも仕事のうち」という考え方が根強く残る職場も多く、忘年会への参加が人間関係を維持するための手段となっているケースも。

職場での立場や今後の関係性を考えると、我慢して参加する方が無難だと判断してしまうのも無理はありません。

忘年会が「仕事」に感じられる理由

忘年会は、本来一年の労をねぎらい、リフレッシュする場であるはず。しかし実際には、「楽しい」というより「疲れる」と感じる人が多いのが実情です。なぜ親睦の場であるはずの忘年会が、仕事の延長のように感じられてしまうのでしょうか。

上下関係がある以上、リラックスできないから

忘年会は、一見フラットな交流の場のように見えますが、実際には職場の上下関係が持ち込まれる場所。

上司や先輩が同席する以上、座る位置や話題、お酒の注ぎ方にまで気を配らなければならず、本当の意味でリラックスすることは困難です。

「何を話せばいいのか」「失言をしないか」と常に緊張状態が続く上、普段の業務とは違う場面だからこそ、より一層気を遣ってしまうという側面も。

お酒が入ることで予測不能な展開になるリスクもあり、かえってストレスが増すケースも珍しくありません。

費用・時間の負担が重いから

忘年会への参加には、金銭的・時間的なコストがかかります。会社からの補助がある場合もありますが、多くは自己負担。数千円の出費は、家計にとって決して軽いものではありません。

加えて、プライベートの時間を削って参加しなければならないという負担も。家族との時間や趣味の時間を犠牲にしてまで参加する価値があるものなのか、疑問に感じる人が増えています。

Job総研の調査でも、参加したくない理由として「経済的な負担が気になる」が33.2%と上位に挙げられました。費用を払い、時間を使い、気まで遣う。こうした負担の大きさから、忘年会は「コスパの悪いイベント」と捉えられるようになっているのです。

若手世代と上司世代|忘年会への意識の違い

忘年会をめぐる意識は、世代間で大きく異なります。ここでは、上司世代と若手世代、それぞれの価値観の背景を探ります。

「上司世代」飲みでつながる文化

バブル期から団塊ジュニア世代にかけて社会人となった上司世代にとって、飲み会は単なる親睦の場ではありませんでした。人脈づくりや情報交換の重要な機会であり、業務時間外に「本音で語る」ことで信頼関係を深めてきたのです。

その背景には、会社が家族のような共同体として機能していた時代の名残があります。

終身雇用が前提で、同じ会社で長くはたらくことが一般的だった時代。濃密な人間関係を築くことが仕事の成功に直結していました。

しかし現代の職場では、はたらき方も価値観も多様化しています。上司世代が大切にしてきた「飲みで距離を縮める文化」は、若手にとって必ずしも自然なものとして受け入れられていないのが実情です。

「若手世代」人との距離を尊重する文化

若手世代にとって、「距離を取る」ことは無関心や冷たさを意味するものではありません。むしろ、プライベートや価値観の違いを尊重し、必要以上に踏み込まないことが信頼関係の前提となっています。

JobQが実施したアンケートでは、「職場でライフイベントの話を聞かれたくない」と回答した人が4割弱。結婚や出産といった個人的な話題にあえて触れないことが、職場での新しいマナーとして根づきつつあることがわかります。

こうした価値観の背景として、SNSの普及やリモートワークの浸透により、「仕事上の関係」と「プライベートな関係」の境界線がより明確になったことが挙げられます。

若手世代が求めているのは、適度な距離感を保ちながら、必要に応じて協力し合える関係性といえそうです。

「忘年会に行かない」は冷たいことじゃない

忘年会に参加しない選択をすることについて、罪悪感を覚える人は多いもの。とはいえ不参加を選ぶことは、必ずしも人間関係の拒絶や職場への無関心を意味するものではありません。ここでは、「行かない」選択について、別の視点から考えてみましょう。

境界を持つことは、自分と相手を守ること

自分の時間や気持ちに境界線を引くことは、心を平穏に保つために必要なこと。無理に合わせることで生まれるストレスや疲労は、めぐりめぐって仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします。

本心では参加したくないのに無理をして出席し、その場で不機嫌な態度を取ってしまったり、後で愚痴をこぼしたりするよりも、最初から誠実に断る方がお互いにとって健全な関係性を保てるという考え方も。

自分のボーダーラインを理解し、適切に「ノー」を言えることは、長く健全にはたらき続ける上で不可欠なスキル。自分の時間を大切にすることで、仕事上の関係性もより対等でフラットなものになっていくのです。

誘う側も悩んでいる

忘年会を企画する幹事や上司も、実は気を遣っています。「断られたら気まずい」「参加を強要したと思われたくない」と感じつつ、慣習としてやむなく声をかけているケースも。

特にハラスメントへの意識が高まっている近年は、飲み会の誘い方ひとつにも慎重にならざるを得ません。

誘う側も誘われる側も、同じ構造の中で疲れている状況だからこそ、お互いが相手の気持ちを尊重し合うことが大切。

誘う側は「断られても当然」という前提で声をかけ、誘われる側は罪悪感を持たずに正直に答える。そんな風通しの良い関係性が築ければ、忘年会をめぐるストレスは大きく軽減されるはずです。

「やっぱり行きたくない…」カドを立てない断り方

忘年会を断りたいと思っても、関係性を壊さずに上手に伝えるのは難しいもの。ここでは、相手への配慮を忘れずに、それでいて自分の気持ちも大切にできる断り方のコツを紹介します。

理由は「具体的すぎず、嘘もつかない」が鉄則

断る理由として使いやすいのは、「家族の予定」「体調管理」「先約」といった、ある程度曖昧な表現。細かく説明しすぎると矛盾が生まれたり、余計な質問を招いたりするので注意が必要です。

たとえば「母の誕生日で実家に帰る」と具体的に言ってしまうと、後日「どうだった?」と聞かれたときに辻褄が合わなくなる可能性が大。一方で、嘘をつくとのちのち気まずくなるため、「家族の用事がありまして……」「都合がつかず」といった、事実に沿った曖昧な表現が無難です。

もしも理由を深掘りされたときは、「プライベートな用事なので恐縮ですが……」と丁寧に濁せば十分。必要以上に説明責任を感じる必要はありません。

断るなら早めに|誠意を示すタイミング

断ることが決まったら、できるだけ早く伝えることが大切。ギリギリになって欠席を告げると、幹事や周囲に迷惑をかけるだけでなく、「やる気がない」「適当に扱われている」という印象を与えかねません。

理想的な伝え方は、メールやチャットで簡潔に済ませること。対面で伝える場合は、業務時間内に手短にが基本です。「お誘いいただきありがとうございます。残念ながら都合がつかず……」と感謝の言葉を添えることで、断りの印象を和らげることが可能。

早めに伝えることは、人数調整や席の変更などの面からも重要なポイント。これ自体が配慮のひとつであり、誠実さの表れになるのです。

フォローの一言で印象が変わる

断るときに「すみません」だけで終わらせると、どこか後ろめたい印象が残りがち。そこで効果的なのが、前向きなフォローの一言を添えること。

「また機会があればぜひ参加させてください」「次回は都合をつけたいと思います」「お気遣いいただきありがとうございます」といった言葉は、相手への敬意を示しつつ、関係性を保つのに役立ちます。

ポイントは、本心から言える範囲で相手への感謝や前向きな姿勢を伝えること。無理に社交辞令を重ねる必要はありませんが、「断る」+「感謝」+「前向きな姿勢」というセットで伝えることで、関係性を損なわずに辞退できます。

どうしても断れないときは?「負担を軽くする工夫」を

立場上どうしても断れない場合や、あるいは年に一度くらいなら参加してもいいかなという場合、「どうせ行くなら快適に」という考え方にシフトするのがおすすめ。ここでは、忘年会参加の負担を軽くする工夫を紹介します。

最初から「一次会だけ」と決めておく

忘年会の負担を軽くする効果的な方法として、まず挙げられるのが「時間を区切る」こと。たとえば、「一次会だけ参加して、二次会は出ない」と決めておくだけでも、心理的なプレッシャーは大きく軽減されます。

終わりが見えていることで、その場を楽しむ余裕も生まれやすくなるもの。事前に「終電の関係で」「翌日早いので」と一言伝えておけば、退席時もスムーズです。

重要なのは、無理をして最後までいることではなく、参加できる範囲で顔を出すこと。完璧を求めず、自分のペースを守ることが、忘年会との上手な付き合い方といえそうです。

無理に盛り上がろうとしない

忘年会では、場を盛り上げようと必要以上に頑張りすぎてしまう人がいます。

とはいえ、無理に明るく振る舞ったり、お酒を勧めて回ったりする必要はありません。あまり乗り気でない状態で参加しているのならなおのこと、最優先すべきは「疲れない工夫」です。

話しやすい人の近くに座る、お酒のペースは自分で調整する、会話に無理に入らず聞き役に徹するなど、小さな工夫で負担は軽減できます。

忘年会は、参加していること自体が誠意の表れ。そこから先は自分を守ることを優先しても問題ありません。

忘年会|「行く」も「行かない」もアリの時代に

忘年会をめぐる価値観は、世代や個人によって大きく異なります。参加したい人もいれば、行きたくない人もいるのがあたりまえ。大切なのは、それぞれの選択を尊重し合うことです。

忘年会へ参加する・しないを仕事に持ち込まず、参加する人は誰もが心から楽しめる。そんな風通しの良い関係性が築ければ、忘年会をめぐるストレスは大きく軽減されるはず。

「行く」「行かない」どちらの価値観も自然に受け入れるのが、これからの時代にフィットする組織づくりの第一歩。お互いの価値観を認め合いながら、それぞれが心地よくはたらける環境を目指していきたいものですね。

参照:『2024年 忘年会意識調査』を実施しました – Job総研プラス
参照:「2023年 忘年会意識調査」を実施しました – Job総研プラス
参照:【ココだけの本音】周りに合わせるために、本当は行きたくないランチ/飲み会に行った経験ある? | JobQ[ジョブキュー]
参照:【ココだけの本音】職場でライフイベントの話ってNG?正直聞かれたくない? | JobQ[ジョブキュー]

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