2025.10.31
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飲み会の話題はどう選ぶ?上司と部下の「ちょうどいい会話」を考える
飲み会の場で「何を話せばいいのかわからない」と感じる人が増えています。上司と部下、世代や価値観の違いが交わる場では、ちょっとした話題選びが空気を左右することに。そこでこの記事では、Job総研の調査をもとに、現代の飲み会をめぐる意識の変化と、気まずさを和らげる「ちょうどいい話題」を紹介します。
会社の飲み会|ちょうどいい話題とは?
会社の飲み会で求められるのは、誰もが参加しやすい話題。重要なのは「相手との共通点が見つかる話題」です。お互いにストレスを感じず、自然と会話が広がるテーマを選ぶことで、場の雰囲気は一気に和らぎます。
食べ物
食べ物の話題は、飲み会でもっとも使いやすい鉄板ネタ。目の前にある料理やお酒について触れるだけでも会話のきっかけになりますし、「好きな食べ物は?」「最近ハマっている店は?」といった質問は誰でも答えやすいからです。
食の好みは人それぞれなので、「パクチーが苦手」「辛いものが好き」といった些細な共通点が見つかれば、そこから話が広がることも。地方出身者であれば郷土料理の話題で盛り上がることもできます。
食べ物の話題は、年齢や立場を問わず誰もが気軽に参加できる安全地帯です。
出身地・思い出の場所
出身地や過去に訪れた土地の話題も、会話を弾ませる定番テーマ。「どちらの出身ですか?」という質問から始まり、地元の名物や観光地、方言の話に発展することもあります。
特に、相手の出身地に自分が旅行で訪れたことがある場合は、「あの場所、行ったことがあります!」と共感を示すことで一気に距離を縮めることも。逆に、知らない土地であれば「どんなところですか?」と興味を持って尋ねることで、相手も話しやすくなります。
思い出の場所には個人的なエピソードが結びついていることが多く、その人の人となりを知るきっかけにもなります。
ニュース・ドラマ・時事ネタ
世間で話題のテーマは、飲み会での会話を盛り上げる有力な選択肢です。ニュースやドラマ、スポーツの話題など、多くの人が知っている共通の話題は会話の入り口にぴったり。
ただし、時事ネタを選ぶ際は注意も必要です。政治色の強いニュースや賛否が分かれる社会問題は避け、エンタメ系やスポーツ、気象関連など、意見の対立が起きにくいテーマを選ぶのが無難。
「最近話題のあのドラマ、見てますか?」「今日は寒かったですね」といった軽い切り口から始めることで、相手も気軽に乗ってくることができます。
趣味
趣味の話題は、相手の人となりを知る絶好のチャンス。「休日は何をされているんですか?」という質問から、推し活、スポーツ、読書、映画鑑賞など、さまざまな話題に広がっていきます。
特に、共通の趣味が見つかった場合には会話が一気に深まります。たとえ趣味が違っていても、相手の話に興味を持って耳を傾けることで、「この人は自分の話を聞いてくれる」と好印象。
ただし、相手が趣味の話をあまりしたがらない場合は無理に掘り下げず、別の話題に切り替える配慮も大切です。
気まずさ必至|避けるべき話題は?
飲み会での話題選びには、もう一つ重要なポイントがあります。それは「避けるべき話題を知っておくこと」。何気ない一言が相手を不快にさせたり、場の空気を凍りつかせたりすることも。ここでは、飲み会で触れないほうがいい代表的なNGトピックを紹介します。
お金・年収・昇進
「給料いくら?」「ボーナス何カ月分?」「昇進まだなの?」──こうした金銭や出世に関する質問は、飲み会の場ではもっとも避けるべき話題の一つです。
お金の話題は、たとえ悪気がなくても相手を不快にさせる可能性が高いもの。特に上司と部下の間では、給与や昇進について触れることが「マウント」や「嫌味」と受け取られるリスクがあります。
上司が自分の年収を自慢げに話せば部下は萎縮しますし、部下が昇進について愚痴をこぼせば上司は評価している側として居心地が悪くなります。
また、同期や同僚同士であっても、給与格差や昇進スピードの違いが明らかになることで、今後の関係性にヒビが入ることも。
お金の話題は、どんなに仲が良い相手であっても慎重に扱うべきデリケートなテーマなのです。
恋愛・結婚・家庭環境
「結婚しないの?」「彼氏(彼女)いるの?」「子どもは?」そんなプライベートに踏み込む質問も、飲み会では避けるのが無難です。
恋愛や結婚、家庭環境は、本人にしかわからない事情が絡んでいることが多いもの。独身である理由、子どもがいない理由、離婚した背景など、人それぞれに複雑な事情があり、簡単に話せるものではありません。
特に上司から部下への「結婚は?」という質問は、セクハラやパワハラと受け取られるリスクもあります。
なお家庭環境は、思いがけない事情を抱えている人が少なくありません。相手から話題を振ってきた場合は別ですが、こちらから積極的に尋ねるのは避けましょう。
政治・宗教・思想
政治や宗教、思想に関する話題は、飲み会における最大級の地雷。意見の衝突が起きやすく、一度対立してしまうと修復が難しいものです。
政治的な立場や宗教観、価値観は、その人のアイデンティティに深く結びついています。だからこそ、自分と異なる意見に対して感情的になりやすく、冷静な議論が困難に。
相手の立場や背景がよくわからない職場の飲み会ではなおのこと、何気ない一言が相手の信条を否定することになりかねません。
「最近の政治、どう思う?」といった軽い気持ちで振った話題が、取り返しのつかない対立を生むことも。どんなに親しい間柄であっても、飲み会の場では避けるのが賢明です。
愚痴・悪口・評価
同僚の悪口や仕事の愚痴は、一瞬の共感を生んでもあとに残るのは後味の悪さ。飲み会の場で誰かを批判することは、自分自身の評価を下げることにもつながります。
「あの人、仕事できないよね」「上司の○○さん、本当に無能」──こうした愚痴や悪口は、その場にいる人たちとの「仲間意識」を生むように錯覚しやすいもの。しかし実際のところ、聞いている側は「この人は陰で人の悪口を言う人なんだな」と警戒心を抱くことが多いのです。
また、飲み会での発言は思わぬ形で本人の耳に入るリスクもあります。誰かが後日「あの飲み会でこんなこと言ってたよ」と漏らせば、人間関係に深刻なダメージを与えることに。不満があっても飲み会の場で安易に口にするのは避けましょう。
上司と部下|飲み会での会話の温度差
同じ場を囲んでいても、上司と部下では飲み会に求めるものが違います。その違いを理解することが、話題選びを楽にする第一歩。それぞれの立場を知ることで、無理なく会話を楽しむヒントが見えてきます。
上司のきもち「関係を深めたいけれど、何を話せばいいかわからない」
かつて「飲みニケーション」が当たり前だった世代の上司にとって、飲み会は部下との距離を縮める貴重な機会。「普段の業務では見えない部下の一面を知りたい」「もっと気軽に話せる関係を築きたい」そんな思いを抱えているのが一般的です。
しかし同時に、上司側は発言に慎重にならざるを得ない状況もあります。「これを言ったらパワハラと思われるのでは?」「プライベートに踏み込みすぎていないか?」と、部下との適切な距離感に悩んでしまいがち。
世代間のギャップを感じる上司ほど、「何を話せば部下が喜ぶのかわからない」と戸惑っています。結果として当たり障りのない話題に終始したり、逆に沈黙が続いてしまったりと、せっかくの飲み会が気まずい時間になってしまうことも。上司は上司なりに、会話に悩んでいるのです。
部下のきもち「評価につながる場だからこそ、自然体でいられない」
一方で部下にとって、飲み会はオフでありながらオンの延長線上にあります。上司が同席している以上、完全にリラックスすることは難しく、常に「見られている」意識がつきまとうのが一般的。
「本音が言えない」「失言が怖い」「お酒を勧められたら断りづらい」このように、部下が抱える不安は多岐にわたります。
上司との距離を詰めすぎれば馴れ馴れしいと思われるかもしれませんし、無口でいれば協調性がないと評価されるかもしれません。また、飲み会での振る舞いが人事評価に影響するのではないかという懸念もあります。
若手社員や新入社員であればなおのこと、「飲み会での正解」がわからず、終始気を張ったまま過ごすことになります。楽しむべき場であるはずの飲み会が、部下にとっては気疲れする「仕事の一部」になっているのが現実です。
忘年会に見る「飲み会にまつわる価値観の変化」
「飲み会=交流の場」という考え方自体が、いま変わりつつあります。忘年会を「仕事の延長」と感じる人が増えた一方で、それでも「一年を締めくくる機会」として大切にする人も。ここでは、Job総研の調査をもとに、飲み会に対する価値観を解説します。
忘年会は必要?不要?

Job総研の「2024年 忘年会意識調査」によると、「職場の忘年会文化の必要性」について、必要だと思う派が52.3%、不要だと思う派が47.7%という結果になりました。
ほぼ真っ二つに意見が割れていることからわかるのは、忘年会に対する価値観が多様化しているという事実。かつては「参加して当たり前」だった職場の忘年会が、いまや「参加するかどうかは個人の選択」という時代に変わりつつあります。
必要派と不要派、それぞれの理由を見ることで、現代の飲み会が抱える課題が浮き彫りに。
「職場の忘年会は必要」と答えた人の意見

必要派の意見でもっとも多かったのは「対面で話せるいい機会」で63.5%。次いで「コミュニケーションが取れる」が53.0%、「普段関わらない人との交流」が47.0%となりました。
必要派が重視しているのは、対面でのコミュニケーションの価値。リモートワークやメールでのやり取りが増えた現代だからこそ、直接顔を合わせて話す機会を貴重だと感じている人が多いのです。
また、普段の業務では接点のない他部署の人と交流できることも、忘年会ならではのメリットとして挙げられています。仕事の話だけでなく、雑談を通じて相手の人となりを知ることで、その後の業務がスムーズになるという実利的な側面も。
必要派にとって忘年会は、職場の人間関係を円滑にする投資の場なのです。
「職場の忘年会は不要」と答えた人の意見

不要派の意見でもっとも多かったのは「不要な出費」で46.7%。次いで「気を遣う文化が苦手」が42.9%、「交流を飲みの場にする必要がない」が38.7%となりました。
不要派が重視しているのは、時間とお金、そして精神的な負担。会費として数千円を支払い、貴重なプライベートの時間を削ってまで参加する価値を感じられないという意見が根強く見られます。
また、席順やお酌、場を盛り上げる役割など、飲み会特有の「気を遣う文化」に疲れを感じている人も多数。さらに、「交流は必要だが、わざわざ飲みの場でなくてもいい」という声もあります。
不要派にとって、忘年会は義務感で参加する苦痛なイベントになっているのです。
うまく話題が見つけられないときはどうする?
話題選びに悩んだ結果、気まずい沈黙が流れた経験はありませんか?ここでは、話題が見つからないときに使える実践的なコツを紹介します。
「聞き上手」を目指す
飲み会では「話し上手」より「聞き上手」が求められます。自分が面白い話をしなければと気負う必要はなく、相手の話に興味を持って耳を傾けることのほうが大切。
聞き上手になるためのポイントは、相手の話に適度な相づちを打ち、共感を示すこと。「へえ、そうなんですね」「それは大変でしたね」といった簡単な反応でも、相手は「自分の話を聞いてくれている」と感じて話しやすくなります。
また、相手が話している最中に自分の話に持っていこうとせず、最後まで聞くことも忘れずに。話し終えたタイミングで「それで、その後どうなったんですか?」と続きを促すと会話が自然に広がっていきます。
聞き上手は、相手を気持ちよくさせる最強のスキルです。
Yes/Noで終わらせない質問をする
会話を広げるコツは、相手が答えやすい「オープン質問」を投げかけること。Yes/Noで終わってしまう質問ではなく、相手が自由に答えられる質問を意識しましょう。
たとえば、「その店、美味しかったですか?」と聞けば「はい」で終わってしまいますが、「その店、どんな料理が美味しかったですか?」と聞けば、相手は具体的なエピソードを話してくれます。
また、「休日は何をしていますか?」「それはどんなときに始めたんですか?」といった5W1Hを使った質問も効果的。
オープン質問を使うことで、相手は自分のペースで話すことができ、会話が自然と続いていきます。質問の仕方一つで、会話の流れは大きく変わるのです。
相手を褒める
褒められて嫌な気分になる人はいません。飲み会の場で相手を褒めることは、場の雰囲気を和ませるもっとも簡単で効果的な方法です。
褒めるポイントは、普段の仕事ぶりでも、その場での持ち物や服装でもOK。「この前のプレゼン、わかりやすかったです」「その時計、素敵ですね」といった何気ない一言が、相手との距離を縮めるきっかけになります。
ただし、褒めるときは具体的であることが大切。「すごいですね」だけでは社交辞令に聞こえてしまいますが、「あのデータのまとめ方、参考になりました」と具体的に伝えることで、相手は「ちゃんと見てくれていたんだ」と感じて嬉しくなります。
自然な褒め言葉は、会話の潤滑油の役割を果たします。
自分がその場を楽しむことを優先する
飲み会で大切なのは、自分自身がその場を楽しむこと。誰が話していて誰が話していないか、気にしている人はほとんどいません。
無理に話題を見つけようと焦る必要はなく、料理を味わったり、他の人の会話を楽しんだりと、その場にいることを楽しむスタンスでいれば十分。自分がリラックスしていれば、その雰囲気は自然と周囲にも伝わり、場に馴染むことができます。
また、自分が楽しんでいる姿は、周囲にもポジティブな印象を与えるもの。話題を提供することだけが貢献ではありません。その場の空気を感じながら、自分なりのペースで過ごすことが、結果的に飲み会を成功させる秘訣です。
「盛り上げる飲み会」から「会話を楽しむ飲み会」へ
飲み会のあり方は、ひたすら飲んで騒ぐスタイルから、上司・部下がお互いを尊重しつつ落ち着いて会話を楽しむスタイルへと変わりつつあります。
飲み会に求められるのは、派手なパフォーマンスではなく、心地よい会話と適度な距離感。上司は部下の価値観を尊重し、部下は上司の気遣いに応える。そんな相互理解のもとで、それぞれが自分らしく過ごせる飲み会こそが、これからの時代に求められる形なのかもしれません。
相手を思いやり、自分も楽しむ。そのバランスを意識するだけで、飲み会はもっと気楽な場になるはずです。








