2025.08.25
部下からのハラスメントの判断基準は?主な内容や4つの対処法を解説
部下からの反抗的な態度や嫌がらせに対して、適切な指導ができないと悩んでいませんか?この記事では、部下からのハラスメントの現状や主な内容、対処法についてわかりやすく解説します。
部下からのハラスメントとは
部下からの反抗的な言動や無視といった行為は、単なる人間関係のトラブルではなく、法的にパワーハラスメントに該当する可能性があります。厚生労働省によると、以下に該当すると、パワーハラスメントに当たる可能性があるとされています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 身体的もしくは精神的苦痛を与え、就業環境を害すること
「優越的な関係」とは、職位に限らず、部下が専門知識や経験で上司を上回る場合や、同僚と結託して集団で抵抗するなどのケースも含まれます。そのため、部下からの行為であっても、要件を満たせばハラスメントと判断される可能性があるわけです。
部下からのハラスメントの現状
職場のトラブルは、今や決して他人事ではありません。Job総研が実施した「2023年ハラスメント実態調査」によると、職場でハラスメントを感じた経験がある人は65.8%にのぼり、多くの従業員が悩みを抱えている現状がうかがえます。

加害者は上司や先輩が大多数を占めるものの、2.1%と少数ながら「部下から上司へ」の被害も存在します。

部下からのハラスメントは、一般的に「逆パワハラ」や「逆ハラスメント」と呼ばれている行為です。上司が体調を崩し、企業の管理責任が問われるケースが報じられるなど、深刻さは増しています。
自分自身を守るためにも、まずは現状を正しく把握して適切な対策を講じましょう。
部下からのハラスメントの主な内容
部下からのハラスメントとして問題になる具体的な行動を、以下の4つのケースに分類して解説します。
- 上司に暴言を吐く
- 上司に暴力を振るう
- 何でもハラスメントとして脅す
- 上司の指示や注意を無視する
自身の状況がどのケースに当てはまるかを確認することで、適切な対応が見えてきます。
上司に暴言を吐く
部下が上司に対して「無能」「使えない」といった暴言を吐く行為は、上司の尊厳を傷つける行為です。
業務上の適切な指導や意見の範囲を逸脱して人格を否定する発言は、上司の就業環境を著しく害するため、パワーハラスメントの要件に該当する可能性があります。
内容によっては、公然の場であれば侮辱罪や名誉毀損に問われる可能性もあるでしょう。暴言は決して許容せず、毅然と「その発言は侮辱行為であり、業務とは関係ないため許容できない」と指摘することが重要です。
ただし、上司からの指示に反発をして突発的に暴言を吐いた場合は、部下からのハラスメントとしてみなされない可能性もあります。
上司に暴力を振るう
直接胸ぐらを掴むといった行為にくわえ、上司の目の前で机を叩いたり、壁を蹴ったりする威圧的な行動も、精神的な苦痛を与える暴力とみなされます。
暴力を振るう行為は、上司の身体の安全を脅かし、恐怖心から正常なマネジメントをすることは困難でしょう。内容によっては暴行罪や傷害罪といった刑事事件に該当する可能性もあります。
部下から暴力を振るわれた場合は、まずは自身の安全を確保し、直ちに部下から距離を取りましょう。人事部門や上長への報告も忘れずに行う必要があります。
何でもハラスメントとして脅す
正当な業務上の指導や注意に対して部下が過剰に反発し、指導を妨害するケースがあります。不当に上司を脅す行為も、部下からのハラスメントに該当する可能性があります。
脅す行為は上司を萎縮させ、適切なマネジメントを実施できなくするため、組織全体の問題になるでしょう。
上司側は指導が業務上必要かつ正当な範囲内であることを意識し、感情的にならずに冷静に伝えることが重要です。指導の日時や内容、部下の具体的な言動を詳細に記録しておくことは、自身を守るための重要な証拠となります。
関連記事
・なんでもかんでもハラスメントとは。悩んだときの判断に役立つポイント
上司の指示や注意を無視する
上司からの業務命令や指示を意図的に無視して職務を放棄する行為も、業務妨害にあたる部下からのハラスメントです。
無視は単にひとりの従業員が仕事をしていないという問題にとどまらず、チーム全体の仕事の生産性を著しく低下させるなど、悪影響を及ぼします。
また、真面目にはたらく他の従業員のモチベーションを削ぎ、職場全体の規律を乱す原因にもなりかねません。特定の部下だけでなく、複数の従業員が結託して上司を意図的に無視したり、会議で情報を共有しなかったりするケースもあります。
意図的な無視は被害者である上司に深刻な精神的苦痛を与え、孤立させてしまいます。個人的な注意で改善が見られない場合は、ひとりで抱え込まずに人事部や上長に報告しましょう。
部下からのハラスメントが起こる原因
部下からのハラスメントが発生してしまう主な理由は、以下の3つです。
- 上司のマネジメント能力不足
- 上司よりも部下の経験やスキルが高い
- ハラスメントに対する社内教育不足
原因を正しく理解することは、効果的な予防策や対策を講じるために重要です。
上司のマネジメント能力不足
部下からのハラスメントの背景には、上司自身のマネジメント能力が関わっている可能性があります。管理職としてのマネジメント能力が不足していると、部下との円滑なコミュニケーションが取れず、信頼関係の構築が難しいでしょう。
コミュニケーションが不足することで、部下の中に上司への不満や軽視する気持ちを育ててしまう可能性があります。たとえば、具体的な指示を出さずに感情的に叱責したり、部下の意見に耳を貸さなかったりする態度は、部下からの不信感につながりかねません。
また、問題行動を見て見ぬふりをして部下を指導しきれないのは、行為を助長させる要因です。上司として毅然とした態度と、丁寧な対話の両方がマネジメントにつながり、部下からのハラスメントを抑止する対策となるでしょう。
上司よりも部下の経験やスキルが高い
職位は上司が上でも、特定の知識やスキル、社内での経験年数では部下が上回るという状況は、部下からのハラスメントが起こりやすくなります。具体的には、以下のケースに該当すると、部下からのハラスメントにつながりやすいでしょう。
- 管理職として上司が中途採用で入社したばかりで社内事情に疎い
- 部下の基本的な能力値が高い
- ITツールや特定の専門分野など、部下のほうが使い慣れている
部下が自身の優位性を過信し、「こんなことも知らないのか」と上司を見下す態度を取ることで、ハラスメントに発展する可能性があります。
パワハラ成立要件のひとつである「優越的な関係」が、職位だけでなく知識や経験によっても形成されることを示しています。
上司側はすべてのスキルで部下に勝る必要はありませんが、相手への敬意と、管理職としての最終決定権を明確に示すバランス感覚が求められるでしょう。
ハラスメントに対する社内教育不足
部下からのハラスメントが発生する原因のひとつに、企業全体のハラスメントに対する教育不足が挙げられます。
一般的に、ハラスメントは上司から部下に行われるという認識が根強くあります。そのため、部下が自分の行っている行動が、法律上のハラスメントに該当するという事実を認識していないケースも多くあります。
本人に悪意がなければ、無自覚のうちに上司の就業環境を害するハラスメント行為に及んでしまいかねません。
企業が部下から上司へのハラスメントも許さない方針を示し、全従業員を対象とした研修を定期的に実施することで、ハラスメントの認識をすり合わせることができるでしょう。
逆パワハラに疲弊する前に。あなたの指導スタイルに合った職場は?
部下との関係に悩むのは、あなたのマネジメントスタイルと職場の文化がズレているサインかも。
この診断は、あなたが最も力を発揮できる指導スタイルや、健全な関係が築ける企業風土を明確にします。
ハラスメントのない職場環境を作るためのヒントを、たった数分で手に入れましょう。
部下からのハラスメントが発生した場合の対処法
実際に部下からハラスメントを受けた場合に、自分自身を守るために取るべき具体的な対処法を4つ紹介します。
- 毅然とした態度で部下と話し合う
- メールや録音などの客観的な証拠を集める
- 上司や人事部に報告・相談する
- 労働局や弁護士など外部機関に相談する
ひとりで抱え込まず、冷静かつ計画的に行動することで、部下からのハラスメントの解決につなげられるでしょう。
毅然とした態度で部下と話し合う
部下からのハラスメントに直面した際、当事者との直接の話し合いが重要です。ハラスメントの背景には、コミュニケーション不足による誤解が原因の可能性もあります。まずは冷静かつ毅然とした態度で話し合うことが重要です。
話し合いをする際は、感情的になって高圧的になったり、問題をおそれて下手に出すぎたりしないように意識することが大切です。
あくまでも対等な立場で「言動が業務に支障をきたしており、容認できない」という事実を具体的に伝えましょう。
伝える際は、人格ではなく問題の行為に焦点を当てて指摘しましょう。初期対応を丁寧に行うと、問題を深刻化させずに解決できるきっかけにつながります。
ただし、相手が聞く耳を持たない、逆上するなどの危険を感じた場合は、無理に話し合いを続ける必要はありません。
メールや録音などの客観的な証拠を集める
当事者間の話し合いで解決しない場合に備え、客観的な証拠を日頃から記録しておくことは、自身を守るために重要です。証拠は当事者だけでなく、第三者が客観的に状況を確認できるものでなければなりません。
たとえば、問題発言が含まれるメールやチャットの履歴、当事者間の会話を録音した音声データなどが証拠として機能します。記録には日時も正確に残しておくと、証拠としての価値がさらに高まります。
「いつ」「どこで」「誰に」「何をされたのか」を具体的にメモしておくだけでも、後の状況説明に役立つでしょう。事実関係を正確に伝えるために、継続して記録を残すことをおすすめします。
上司や人事部に報告・相談する
当事者との話し合いによる解決が難しい、あるいは行為がエスカレートする場合は、ひとりで抱え込まず、速やかに社内の第三者に協力を求めましょう。相談先としては、直属の上司や人事部、コンプライアンス室といった専門部署が適切です。
特に人事部は、ハラスメント問題に対応する専門的な知識や手順に精通している場合が多く、客観的な立場から解決策を検討してくれます。
早めに相談することで、問題が大きくなる前に配置転換や部下への正式な指導など、組織的な対応で解決できる可能性を高められます。
相談する際は、集めた証拠を提示しながら、感情的にならずに事実関係を時系列で説明することが重要です。
「相手に謝罪してほしい」や「行為をやめさせてほしい」など、自分がどのようにしてほしいのかを明確に伝えることで、会社側も具体的な対応を取りやすくなります。
労働局や弁護士など外部機関に相談する
社内の上長や人事部に相談しても解決に至らない場合は、外部の専門機関への相談を検討しましょう。まず相談すべきは、各都道府県にある労働局の総合労働相談コーナーです。
労働局では労使問題の専門相談員が無料で相談に応じてくれ、解決に向けた助言だけでなく、必要に応じてあっせん制度を案内してくれます。
労働局の対応でも解決できない場合は、労働問題に強い弁護士に相談し、訴訟などの法的な対応を視野に入れる方法もあります。
ただし、弁護士への依頼は相談料や着手金などの費用と手間がかかるため、慰謝料の請求や不当な処分を撤回させたいなど、明確な目的がない限りは慎重な検討が必要です。
まずは無料相談などを活用し、見通しを確認することから問題の解決に向けた行動をはじめることをおすすめします。
まとめ
部下からのハラスメントが発生している際は、一人で抱え込まず、冷静かつ段階的に行動することが重要です。まずは問題の言動を毅然と指摘し、メールや録音などの客観的な証拠を記録しましょう。
そのうえで社内の上司や人事部に相談し、組織としての対応を求めましょう。社内で解決しない場合は、労働局や弁護士といった外部機関への相談を検討することが重要です。
正しい知識は自分を守る武器になるため、この記事を参考に、まずは状況記録からはじめてみましょう。









