「何を言ってもハラスメントと受け取られてしまうのでは…?」という、なんでもかんでもハラスメントが問題に。〇〇ハラに対する意識が高まっている昨今、上司と部下の間でコミュニケーションが取りにくくなっていませんか?Job総研の調査をもとに、職場で気持ちよくコミュニケーションをとる方法についてヒントを探っていきましょう。
Job総研の「2025年 ハラスメント実態調査」では、若者世代を中心にこのような意見がみられました。
SNSやネットニュースで情報が手に入りやすい環境が、逆にハラスメントに敏感すぎる状況を生み出しているのかもしれません。
2020年にパワハラ防止法が施行されてから5年が経過し、ハラスメントへの意識が高まっています。
以前から知られていたセクハラやパワハラに加えて「カスハラ(カスタマーハラスメント)」「マタハラ(マタニティハラスメント)」「アルハラ(アルコールハラスメント)」など、さまざまなハラスメントが定義されるようになりました。
ハラスメントへの意識の高まりから、過剰な反応が見られることも…。
ハラスメントかそうでないかを判断する基準のひとつに、被害者が不快に感じるか、という点があげられます。同じ行為でも不快に感じるかそうでないかは人それぞれです。
通常のコミュニケーションのつもりが、相手次第ではハラスメントと受け取られてしまうこともあります。
「相手がどう感じているか」という点は自分では判断できないため、自らの言動がハラスメントに当たるのかどうかわからない人が増えているのかもしれません。
ハラスメントに敏感な人が増えている今「これってハラスメントですよね⁉︎」と相手の言動に過剰に警戒する、なんでもかんでもハラスメントの事例も出てきています。
例えば、以下のようなケースは、なんでもかんでもハラスメントに当たるかもしれません。
より具体的な、なんでもかんでもハラスメントの事例もチェックしましょう。
社員Aの服装はスカート丈が短く、就業規則における服装規定に則っているものとはいえませんでした。
上司Bが服装について指摘すると、Aは「それってセクハラですよね」と周りに聞こえるような声で言い返します。
また上司Bがいないところでは、同僚や先輩に「上司のBさんがセクハラをしてくる」と相談もしているようです。
TPOに合わない服装や就業規則に反する服装について指摘するのは、セクハラなのでしょうか?
課長Cは、指示通りに仕事をしない新入社員Dの態度について「きちんと指導しないといけない」と感じていました。
その日に依頼した仕事も、指示通りには行われておらず修正が必要な状態だったため、課長CはDに対して、一通りの指示とその指示通りにやり直すよう伝えます。
するとDは「やり方を強制するならパワハラですよね」と言い返しました。
やり方が決まっている仕事について、その通りにするよう指示をすることはパワハラにあたるのでしょうか?
セクハラ・パワハラ・マタハラなど、「〇〇ハラ」と名前がつくものは多岐にわたります。「〇〇ハラ」が増加する時代についてどう思うか賛否を聞くと「賛成派」は69.5%で過半数を占めました。賛成派の上位3つの理由は以下の通り。
一方で、〇〇ハラが増えることに対して、追いつけないというネガティブな意見も。
自身の安全性が確保されるメリットがある一方で、自分自身も加害者になりえる状況に生きづらさを感じやすいようです。
〇〇ハラが増加する時代。時代への向き合い方を聞くと、「時代に合わせる派」が83.1%でした。〇〇ハラへの意識を高めようとする意思がある人が非常に多いことが伺えます。
一方で、〇〇ハラの増加に対する価値観を聞くと「生きにくい」と答えたのはなんと69.1%。ハラスメントを意識したい言動の意思はあっても、本音では「生きにくい」「疲れる」と考えている人が過半数を上回っていることがわかります。
また〇〇ハラが増えている今の時代について、52.2%が「過ごしにくい」とも感じています。
職場で他人の発言がハラスメントかどうかが気になると回答した人に「特に神経を使う話題」についてヒアリングしました。
現時点で法律により禁止されているのはパワハラ・セクハラ・マタハラの3種類のみですが、〇〇ハラは他にもあります。
知らず知らずのうちに加害者になっていた、という事態を避けるなら、外見や性別などを安易に話題にしないことも対策のひとつとして有効かもしれません。
自分の言動がハラスメントにあたるかもしれない、と心当たりのある人は42.7%と半数に迫る割合でした。
男女別に集計すると、男性は51.6%が、女性は22.6%が、ハラスメントの加害者になった心当たりがあると回答しています。
このようにハラスメントに気をつけているからこそ、自分の言動を振り返ったときに心配になってしまうのかもしれません。
加害者にならないよう穏便に済ませたいからと、ハラスメントへの過剰な意識をそのままにしておくと、はたらきにくい職場になってしまうことも。なんでもかんでもハラスメントの放置には、実はリスクもあるんです。
適切な指導や指摘、日常のコミュニケーションの範囲内のやり取りで「それってハラスメントですよね」という過剰な反応が起こり得る職場では、全体の雰囲気が悪くなることも。
ハラスメントやハラスメントの加害者になることを避けるために、必要な会話がスムーズにできなくなる可能性もあります。
仕事のモチベーションを高く保つのは難しいでしょう。
「ハラスメントをしてしまったかも…」と自分の言動を心配し続けなければいけない環境では、ストレスから精神的・身体的な不調が出やすいもの。離職する人も出てきやすいでしょう。
人手不足になれば、残ったメンバーの担当する業務が増えるため、負担からさらに離職者が増える悪循環になることも考えられます。
必要な指導や注意までハラスメントだと言われる環境では、部下に仕事を頼みにくくなる上司もいるでしょう。
あれもこれも全部ひとりでやろうと思えば、時間外労働が増えて生産性の低下につながりかねません。
職場で行われているハラスメント対策の口コミはさまざま。
「はたらきやすくなるよう行動した」「上司や産業医に相談した」という口コミがある一方、「研修が行われているけれど効果のほどは…」という口コミも。職場に合う対策が必要なようです。
ハラスメントへの意識の高まりから、〇〇ハラが増えています。そんな中、正直「生きにくい」「過ごしにくい」と感じている人が、調査では過半数を超えていました。
「これを言ったらハラスメントになってしまうかも」と考えながらのコミュニケーションはストレスにつながります。
職場の体制や制度、雰囲気などに合う対策は何か、考えてみるとよさそうです。
参照:
Job総研『2025年 ハラスメント実態調査 〜加害編〜』を実施しました
Job総研『2025年 ハラスメント実態調査 〜被害・職場対策編〜』を実施しました
『2024年 ハラスメントの境界線調査』を実施しました
Job総研『2024年 価値観変化の実態調査』を実施しました