2025.08.15
エイジハラスメントとは?職場の年齢差別の実態と対策方法
「年齢のことを話題にするだけでハラスメントになってしまうの…?」エイジハラスメントへの意識が高まる昨今、世代を超えた職場のコミュニケーションが取りにくくなっていませんか?Job総研の調査をもとに、年齢にかかわらず気持ちよくはたらける環境づくりのヒントを探っていきましょう。
エイジハラスメントとは何か
エイジハラスメントという言葉は比較的新しいものですが、その背景には社会構造の変化と多様なはたらき方への理解不足があります。
エイジハラスメントの定義と基本知識
エイジハラスメントとは、年齢を理由として行われる嫌がらせや差別的行為のことです。職場において、年齢や世代を根拠に相手を非難したり、不当な扱いをしたりする行為全般を指します。
このハラスメントの特徴は、加害者が悪意を持たずに行うケースが多いことです。日常的な会話の延長として年齢に言及することで、知らず知らずのうちに相手を傷つけているケースが少なくありません。
エイジハラスメントが注目される社会的背景
エイジハラスメントという言葉が広く認知されるようになったのは、2015年にテレビ朝日で放送されたドラマ「エイジハラスメント」でした。このドラマをきっかけに、年齢差別の問題が社会的に注目を集めるようになりました。
現代社会では、少子高齢化の進行により職場の年齢構成が多様化しています。60歳を過ぎても現役ではたらく人が増える一方で、20代でも重要なポジションを担う若手社員も珍しくありません。
このような年齢の垣根を越えたはたらき方が一般的になる中、従来の年功序列的な価値観との摩擦が生じているのです。
また、終身雇用制度の変化により、転職が当たり前となった現在では、年齢と経験値が必ずしも一致しないケースも増えています。こうした社会構造の変化が、年齢に関する固定観念やステレオタイプを生み出し、エイジハラスメントの温床となっているのです。
エイジハラスメントの具体例
職場で起こりがちなエイジハラスメントには、様々なパターンがあります。一見何気ない発言や行動でも、受け手にとっては深刻な精神的ダメージとなることがあります。
年齢を理由に相手を非難する
最も典型的なエイジハラスメントは、年齢を根拠として相手の能力や行動を否定することです。年齢を根拠として相手を否定する発言や行為には、以下のようなものがあります。
- 30代以上の男女を「おじさん」「おばさん」と呼ぶ
- 「もう歳なんですから」と中高年社員をからかう
- 「この歳でこんな仕事もできないの?」と非難する
- 業務上の理由なく年齢制限を設ける
- 年齢を理由に昇格の機会を与えない
これらの発言は、相手の尊厳を傷つけるだけでなく、年齢に対する偏見を助長する結果を招きます。特に、年齢を理由とした能力否定は、相手の自信喪失やモチベーション低下につながる深刻な問題です。
「これだからゆとり世代は」など世代で決めつける
世代論に基づいた決めつけや偏見も、エイジハラスメントの典型例です。
「これだから、ゆとり世代は」「いかにもZ世代って感じがする」「団塊の世代ってそうだよね」といった発言は、個人の特性を無視して世代のステレオタイプで判断する行為です。
このような世代論による決めつけは、個人の努力や能力を正当に評価しない姿勢を示すものです。また、特定の世代に対する偏見を職場全体に広める要因ともなります。
年齢だけを理由に仕事の割り振りを変える
業務配分において年齢のみを判断基準とすることも、エイジハラスメントの一形態です。若手という理由だけで簡単な仕事や飛び込み営業ばかりを任せたり、中高年だからという理由で新しい技術を使う業務から外したりする行為が該当します。
もちろん、新人に難しい業務を任せることはできませんが、年齢ではなく経験やスキルレベルに基づいて判断することが重要です。年齢を理由とした業務制限は、個人の成長機会を奪い、職場全体の生産性低下にもつながります。
年齢と役職・立場を引き合いに出す
年齢と役職や社会的立場を関連付けた発言も、エイジハラスメントとして問題視されています。「○歳なのにまだ平社員なのか」といった発言や、役職についていないことを理由に重要な業務から除外する行為が典型例です。
また、プライベートな事柄についても「○○歳なんだから、もう結婚しないと」といった年齢と人生設計を結びつけた発言は、個人の価値観や選択を否定する不適切な行為といえます。
このような発言は、年齢に対する固定観念を押し付ける行為であり、多様なはたらき方や生き方を認めない姿勢を示すものです。
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なぜハラスメントによるトラブルが後を絶たないのか
職場でのハラスメントを原因とするトラブルが後を絶ちません。背景には、ハラスメントに対する認識のずれや、効果的でない対策の実施などがあります。
587人の社会人男女を対象にJob総研が実施した調査結果を元に、原因について探っていきましょう。
ハラスメントかどうかの判断は個人差がある

Job総研の調査によると、ハラスメントに関する最大の課題として「個人によって受け取り方が違う」と回答した人が53.7%に上りました。この結果は、ハラスメントの判断基準が曖昧で、主観的要素に大きく左右されることを示しています。
同じ発言や行動でも、受け手の価値観や過去の経験によって、ハラスメントと感じるかどうかが大きく異なります。また、発言者の意図と受け手の感じ方にギャップが生じることも多く、「そんなつもりではなかった」という弁明が、かえってトラブルを複雑化させてしまうこともあるようです。
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ハラスメントに対して敏感な風潮

現代社会では、ハラスメントに対する意識が高まっており、以前はスルーされていたレベルの言動でも問題視される傾向があります。
Job総研の調査では、ハラスメントの境界線への意識について「高くなっている派」が53.6%で過半数を占めました。
この風潮自体は被害者保護の観点から重要ですが、一方でハラスメントを恐れるあまり、部下に対して必要な指導や助言を控えてしまうようなケースも出ており、「ホワイトハラスメント」など、新たな問題も発生しています。
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コミュニケーションによって防げるという誤解
ハラスメント対策として「コミュニケーションの活性化」を掲げる組織が多くありますが、これは必ずしも効果的ではありません。
よくある問題として、「世代間交流を促進しよう」「もっと気軽に話しかけよう」といったコミュニケーション活性化の取り組みが、かえって年齢に関する不適切な発言を増加させてしまうケースがあります。
雑談の話題として「男女」「出身地」「年齢」「学校」などはよく話題に上りますが、これらは扱い方を間違えるとハラスメントと受け取られる可能性が高くなります。
「自分は大丈夫」という勘違いからくる勉強不足
多くの人は「自分はコンプライアンスが備わっており、ハラスメントをしない」と考えがちですが、この思い込みが問題を深刻化させています。
ハラスメント研修を受講しても、その知識を実際の業務に活かす方法が理解できていないケースが多く、時間の経過とともに研修内容を忘れてしまう人も少なくありません。
その結果、半年後、1年後には無自覚にハラスメントをする側に回ってしまう可能性があります。特に、エイジハラスメントは日常会話の延長で起こりやすく、加害者が問題意識を持ちにくいという特徴があります。
エイジハラスメントが職場に与える影響
エイジハラスメントは、被害者個人だけでなく職場全体に深刻な影響を与えます。組織の生産性や職場環境の悪化につながる可能性があります。2025年にJob総研が543人の社会人男女を対象に実施した調査データを元に、具体的な影響について見ていきましょう。
被害者の82.2%が退職を検討・実行している
Job総研の調査によると、ハラスメント被害者の82.2%が退職を検討または実行していることが明らかになりました。

ハラスメントによる退職は、優秀な人材が去ってしまうだけでなく、「ハラスメントを理由に退職した」という話が会社内で広まれば、会社のイメージダウンにつながりますし、残っているメンバーの雰囲気が悪くなってしまうことも考えられます。
特に、ハラスメントの加害者が会社に残っている場合、職場が気まずい空気になってしまうかもしれません。
コミュニケーションが萎縮し業務効率が低下する
エイジハラスメントが職場で発生すると、社員全体のコミュニケーションが萎縮する傾向があります。年齢に関する発言を避けるあまり、必要な意見交換や議論ができなくなったり、打ち合わせで安心して意見を発言できなくなったりする状況が生まれます。
この結果、チームワークの悪化や意思決定の遅れが生じます。
特に問題なのが、若手に作業を教えるときです。教える側としてはどうしても「新人だから」「まだ若いから」という言葉を使いがちですが、これがハラスメントとして受け取られかねません。
その結果、うまく仕事を教えられない、あるいはエイジハラスメントのトラブルを間近で見た人が教えるのを拒否する、といった問題につながってしまいます。
管理職になりたがらない人が75.3%も増加する

Job総研の調査では、管理職になりたがらない人の割合が75.3%に達していることが判明しました。この背景には、ハラスメント問題への懸念が大きく影響しています。
部下と接するときには、エイジハラスメント以外にもセクハラ、モラハラ、パワハラなどのさまざまなハラスメントに注意しなければなりません。そのため、管理職は常に神経を張り巡らせて部下と接することが求められます。
そのストレスによって昇進を避ける傾向が強まり、組織の後継者育成に支障をきたしています。
エイジハラスメントから身を守る方法
エイジハラスメントを防ぐためには、加害者にも被害者にもならないための心がけが大切です。
日常的にできる具体的な対策を身につけることで、エイジハラスメントのリスクから自身を遠ざけましょう。
加害者にならないために気をつけること
日常の何気ない会話の中で、私たちは年齢に関する発言をどのくらいしているでしょうか。
「若いね」「ベテランだから」といった言葉は、一見褒め言葉のように聞こえますが、受け取る側にとっては年齢による決めつけと感じられるかもしれません。
以下の点を意識してみると、加害者になるリスクを大きく減らすことができます。
- 「○○さん」「部長」など、相手を個人名や役職名で呼ぶ
- ハラスメントに関する講習を受けるなど、定期的に情報を収集する
- 発言する前に「これは年齢差別にならないか」と一度立ち止まって考える
- 異なる世代の価値観を理解しようと努める
- 年齢ではなく、その人自身の能力や経験に目を向ける
重要なのは「ハラスメントをしてしまうかもしれない」という意識を持つことです。
これは、車の運転や医療現場と同じで、「絶対に事故は起こさない」と過信している人よりも、「事故を起こしてしまう可能性がある」と常に意識している人の方が、結果的に安全な行動を取れるというのと同じです。
「自分は大丈夫」という思い込みこそが、最も危険な落とし穴かもしれません。日頃から年齢に関する発言や行動について意識を向けることで、無意識のうちに相手を傷つけてしまうリスクを減らすことができるのではないでしょうか。
被害者にならないための心がけ
年齢に関する不適切な発言を受けたとき、「これって私が敏感すぎるのかな」と自分を責めてしまった経験はありませんか。また、「波風を立てたくない」という思いから、我慢を続けてしまうこともあるかもしれません。
しかし、自分の感じた違和感を大切にすることも必要です。思い悩む前に、以下に当てはまるかチェックしてみましょう。
- 親しい人に悩みを話し、客観的な意見を聞く
- 不快に感じたときは「それは年齢に関する発言ですね」と冷静に伝える
- ハラスメントだと感じたら、いつ、どこで、誰が、何を言ったかを記録しておく
- 社内外に信頼できる相談先を見つけておく
- エイジハラスメントがどのような問題なのか、法的にはどう扱われるのかを知っておく
ハラスメントを受けたとき、大切なのは「一人で抱え込まずに早期に対処すること」です。ハラスメントかどうか難しいラインなら、同僚や先輩、友人に経験を話し、ハラスメントに該当するか聞いてもいいかもしれません。
また、明確にハラスメントと判断できるなら、関係性によってはその場で冷静に伝えても良いでしょう。相手が無自覚だったなら謝罪し、以降は気をつけてくれる可能性もあります。
相手に直接注意するのが難しい場合、社内の相談窓口や上司に相談するといった方法が効果的です。その場合、ハラスメントの内容について記録し、正確に報告できるようにします。
適切な理解がエイジハラスメントを防ぐ第1歩
エイジハラスメントは、多様化する現代の職場において無視できない問題です。以前の日本であれば、年功序列で出世する企業も多く、年齢と立場は切り離せない関係にありましたが、現在は違います。
年齢や世代に対する固定観念や偏見が、知らず知らずのうちに相手を傷つけ、職場環境を悪化させることがあることに注意しなければなりません。
被害者にならないように普段から気をつけると同時に、加害者にならないよう、日常の言動に気をつけ、情報収集を怠らない姿勢が大切です。









