2025.08.29

職場の不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは。どう対処すればいい?原因や相談先も解説

職場で上司や同僚などの不機嫌な態度に振り回され、心が疲れている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、不機嫌ハラスメントの原因や、自分を守るための具体的な対処法を解説します。相手の感情に左右されず、穏やかな気持ちで仕事に向き合うためのヒントをお伝えします。

職場の不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは?

不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは、上司や同僚が不機嫌な態度を繰り返し表し、周囲にプレッシャーや精神的なストレスを与える行為を指します。

不機嫌ハラスメントとモラルハラスメントとの違いや、不機嫌ハラスメントが引き起こす問題について解説をします。

不機嫌ハラスメントとモラルハラスメントの違い

不機嫌ハラスメントは、言葉や態度で相手に精神的な苦痛を与えるモラルハラスメント(モラハラ)の一種とされています。

両者の大きな違いは、「攻撃の方法」と「加害者の自覚の有無」にあります。不機嫌ハラスメントは、ため息や舌打ち、物を乱暴に扱うといった不機嫌な態度が主な特徴です。

加害者本人に明確な悪意はなく、自分の感情をコントロールできずに無意識のうちに行なっているケースも少なくありません。

一方でモラハラは、態度に加えて人格を否定する発言や、プライベートへの過度な干渉など、より悪質で執拗な精神的攻撃を指します。相手を支配し、追い詰めるという明確な意図を持って行われることが多い行為です。

Job総研の「2025年 ハラスメント実態調査 〜被害・職場対策編〜」によると、職場でのハラスメント被害の約3割が、モラルハラスメントに該当すると報告されています。

モラルハラスメントは、身近な職場でも起こりうる問題であり、決して軽視できません。被害を受けているときは「自分だけではない」と理解しつつ、早めに周囲や相談期間に相談することを心がけましょう。

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不機嫌ハラスメントが引き起こす問題

上司や同僚などの不機嫌な態度は、職場の雰囲気が悪くなるだけではなく、被害者個人と組織全体に深刻な悪影響を及ぼします。不機嫌ハラスメントが引き起こす問題の一例は、以下のとおりです。

  • ストレスや不安が増大する
  • 生産性や業務効率が低下する
  • 職場の人間関係が悪化する

その結果、職場環境に耐えられず退職を考える人が増え、離職率の上昇にもつながります。不機嫌ハラスメントは決して個人だけの問題ではなく、組織全体の健全性を損なう重要な問題です。

不機嫌ハラスメントに遭っている場合はひとりで抱え込まず、周囲へ相談するなど早めに対処することが大切です。

職場の不機嫌ハラスメント(フキハラ)の具体例

では具体的に、どのような行為が不機嫌ハラスメントに該当するのでしょうか。一般的によくある不機嫌ハラスメントの具体例を4つ紹介します。

特定の人にのみ不機嫌になる

他の人には楽しそうに話すのに、特定の相手にだけ不機嫌な態度を取るのは、不機嫌ハラスメントの典型的な例です。

被害者は「自分に何か問題があるのでは」と思い込みやすく、さらに周囲からは加害者が他の人と普通に接している姿が見えるため、問題が認識されにくいのが特徴です。

加害者はターゲットを限定することで、周囲に気づかれずに相手を追い込み、自分の優位性を保とうとします。その結果、被害者が精神的に孤立してしまうケースも多くあります。

もし「自分だけが違う扱いを受けている」と感じたら、それは考えすぎではありません。不公平な態度は、被害者側を追い詰めることを目的にした明確なハラスメント行為であると認識することが重要です。

無視をする

挨拶や業務上の質問をしても意図的に反応しない無視は、相手の存在を否定する精神的に大きなダメージを与えるハラスメント行為です。

Job総研の「2025年 ハラスメント実態調査 〜被害・職場対策編〜」によると、ハラスメントを受けた15.4%の人が「挨拶や会話の意図的な無視」を経験しています。

無視による不機嫌ハラスメントは、目に見える証拠が残りにくいため軽視されがちですが、被害者に強い心理的負担を与え、業務遂行にも悪影響を及ぼしかねません。無視された場合は、社内の相談窓口や記録の保存を行い、早期の対応につなげることが重要です。

ため息や舌打ちをする

ため息や舌打ちも、不満や敵意を間接的に示す不機嫌ハラスメントの一種です。加害者が無意識で行なっている可能性もあります。

本人にとっては癖や感情の表れにすぎなくても、受け手にとっては強いプレッシャーとなり、多大なストレスにつながります

このような態度が繰り返されると、被害者は次第に自分の言動に自信を失い、質問や意見を控えるようになってしまうでしょう。相手の感情を背負い込まず、「自分は悪くない」と冷静に受け止めることが大切です。

無言の圧力をかける

言葉による直接的な攻撃はなくても、態度や雰囲気で相手を威圧することも、不機嫌ハラスメントにあたります。

無言で不機嫌さを示すことは、周囲に対するアピールであると同時に、対象者を精神的に追い込む行為です。加害者は明確な言葉を使わないことで、ハラスメントとしての指摘を回避しようとします。

しかし、威圧的な態度が続くと、被害者は直接的な言葉を受けていなくても、強い心理的負担を抱えるようになり、自信を失ったり、職場での発言を控えるようになったりします。場合によっては心身に不調をきたすこともあるため、軽視はできません。

このような状況に直面したときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる上司や相談窓口に相談し、日常的に記録を残すことが重要です。

不機嫌ハラスメント(フキハラ)が発生する原因

不機嫌ハラスメントが発生する原因は、何なのでしょうか。ここでは、主な3つの原因を見ていきましょう。

ストレスと体調不良

不機嫌ハラスメントの背景には、加害者自身が過度なストレスを溜めていたり、体調不良を抱えていたりすることが原因となる場合があります

強いストレスや体調不良によって感情のコントロールが難しくなり、不機嫌な態度として周囲に表れてしまうことがあります。特に、慢性的な睡眠不足など、外からは分かりにくい不調が原因でイライラしやすくなるケースも少なくありません。

こうした態度が特定の時期や状況で目立つ場合、本人も気づいていない心身の問題が背景にある可能性があります。その点を理解しておくと、冷静に距離を保ちながら対応する助けになるでしょう。

低い自己肯定感

一見すると威圧的に見える不機嫌な態度も、加害者の低い自己肯定感が影響している場合があります。自分に自信が持てないことから不安や劣等感が強まり、結果として不機嫌な態度につながるケースです。

たとえば、自分の能力や実績に自信が持てず、優秀な同僚や部下に先を越されることへの恐れから、不機嫌な態度で相手を威嚇し自分の立場を守ろうとします。また、過去の否定的な経験や、意見を建設的に伝えるスキルの不足が原因で、感情を適切に表現できないこともあります。

不機嫌な態度は必ずしも強さの表れではなく、内面的な弱さや不安の裏返しである場合も理解することが、冷静に状況を見極める助けとなるでしょう。

相手への支配欲

不機嫌ハラスメントには、加害者が相手を自分の思い通りにコントロールしたいという、歪んだ支配欲が隠れている場合もあります。不機嫌な態度を取ることで相手にプレッシャーを与え、感情や行動をコントロールしようとするケースです。

相手が自分の機嫌を気にして行動を修正する様子を見ることで、加害者は自分が場を支配しているかのような錯覚に陥り、一時的な満足感を得ます。しかし、その満足感は持続せず、結果として不機嫌な態度が繰り返され、支配欲がさらに強まっていく傾向があります。

このような支配欲に基づく不機嫌ハラスメントに直面した場合、相手に過度に合わせるのではなく、立場や考えを冷静に示すことが大切です。境界線を意識して、「自分のテリトリーを守る」ことが、ハラスメントから身を守るのに有効です。

職場の不機嫌ハラスメント(フキハラ)への対処法

不機嫌ハラスメントに直面した際に、自身の心と立場を守るための具体的な対処法を4つ解説します。

相手と距離を取る

不機嫌ハラスメントへの対処として、もっとも即効性のある方法の一つが、「加害者と物理的に距離を取る」ことです。相手の不機嫌を、被害者自身の努力で解消することはできません。

そのため、業務に支障のない範囲で必要以上に関わらないようにしたり、上司や人事部に相談して席を離してもらったりするなど、物理的な距離を確保する工夫が効果的です。もし物理的に離れるのが難しい場合では、会話を最小限にするなど、心理的な距離を意識して保ちましょう。

不機嫌ハラスメントの状況を記録する

不機嫌ハラスメントを受けたときは、できるだけ詳細な記録を残しておくことが重要です。不機嫌ハラスメントは、暴言や暴力のように目に見える形で残りにくく、相手に否定されやすい特徴があります。

「いつ」「どこで」「誰に」「何をされたか」を具体的に書き残すことは、相談する際に主張を裏付ける有効な証拠となります。手帳やスマートフォンのメモアプリなどを使い、できるだけ客観的かつ具体的に書き留めましょう。

記録を取ることは証拠の確保だけでなく、自分の感情を整理し、冷静に状況を見直す助けにもなります。未来の自分を守るためにも、今日から記録を始めることをおすすめします。

感情的にならずに冷静になる

相手の不機嫌に引きづられて自分まで感情的になると、問題の解決はさらに難しくなります。重要なのは、相手の感情に巻き込まれず、冷静さを保つことです。

相手の不機嫌な態度は、あくまで相手自身の問題であると割り切ることが大切です。「不機嫌な態度は効果がない」と示すことで、相手に通じないと理解させ、不機嫌ハラスメントを防ぐ助けになります。

ひとりで抱え込まずに相談をする

不機嫌ハラスメントに直面したときは、決してひとりで抱え込まないことが大切です。ひとりで悩み続けていても状況は好転せず、精神的に追い詰められてしまいます。

信頼できる上司や同僚、または専門の相談窓口に相談することは、解決への第一歩です。相談することは弱さではなく、問題を解決するための前向きな行動です。客観的な視点を取り戻し、解決の糸口を見つけるためにも、早めの相談を心がけましょう。

不機嫌ハラスメント(フキハラ)が発生した場合の相談先

不機嫌ハラスメントの問題はひとりで抱え込まず、適切な相手に相談することが重要です。おすすめの相談先を3つ紹介します。

上司や人事部

不機嫌ハラスメントの被害に遭った場合、まずは社内の信頼できる人物に相談することをおすすめします。

人事部は従業員の労務管理を担う専門部署であり、客観的な立場から状況を把握して、対応を検討してくれるでしょう。

もし加害者が直属の上司である場合、本人に相談しても改善は期待できません。むしろ状況が悪化するリスクがあるため、さらに上の上司や別の部署の責任者に相談するのが効果的です。

相談時には、これまで記録したメモを持参し、感情的にならずに事実を具体的に伝えることが大切です。社内の事情に詳しい上司や人事部であれば、状況を理解して加害者への注意指導や、部署異動・席替えといった環境改善につながる対応が期待できます。

ハラスメント相談窓口

上司や人事に直接相談するのが難しい場合、社内に設置されている「ハラスメント相談窓口」を利用するのがおすすめです。

パワハラ防止法の施行により、多くの企業では専門の研修を受けた担当者が窓口を担当しており、プライバシーを守りながら相談できる体制が整えられています。相談した事実や内容が、本人の許可なく加害者や他者に伝わることはありません。

また、会社によっては外部の弁護士や労働組合と連携し、社外の窓口を用意している場合もあります。社内では話しにくい内容も、外部窓口であれば安心して相談できます。

まずは社内イントラネットや就業規則を確認し、相談窓口の連絡先や利用方法を調べてみましょう。

外部の専門機関

社内の窓口に相談しても状況が改善しない場合や、会社の対応に不安を感じる場合は、社外の専門機関を利用する方法が有効です。

まずおすすめなのが、厚生労働省が全国に設置している「総合労働相談コーナー」です。無料で専門の相談員が対応し、必要に応じて会社への助言や指導を行ってくれるため、社内での解決が難しいときに助けとなるはずです。

さらに、深刻な場合には労働審判などの法的な措置を検討することも視野に入れましょう。法的手続きを進める際には、弁護士への相談が現実的で安心です。

また、不機嫌ハラスメントが原因でうつ病などの精神的ダメージを受けた場合は、地域の精神保健センターや心療内科などの医療機関に相談し、専門的な治療やサポートを受けることが重要です。

状況に応じて、適切な専門機関や医療機関を頼りましょう。

まとめ

職場の不機嫌ハラスメントについて、原因や具体的な対処法を解説しました。大切なのは、「相手の不機嫌は自分のせいではない」と理解し、ひとりで抱え込まないことです。

相手と冷静に距離を置き、受けた言動を記録して信頼できる上司や人事、あるいは社外の専門機関に相談することが、状況を打開するうえで重要です。

紹介した方法を参考に、今日からできる小さな行動を始めてみましょう。それが、理不尽なストレスに振り回されず、穏やかな毎日を取り戻すための第一歩になります。

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