2026.02.20
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「残業キャンセル界隈」って何?定時で帰ることへの迷いと向き合うヒント
SNSで話題の「残業キャンセル界隈」。定時で帰ることを堂々と宣言する若者たちの姿に共感する人もいれば、「本当に大丈夫?」と不安を感じる人も。この記事では、「残業キャンセル界隈」について解説しつつ、自分らしいはたらき方について考えます。
そもそも「残業キャンセル界隈」とは?
「残業キャンセル界隈」という言葉。一見すると軽いノリのネットスラングに聞こえますが、その背景にははたらき方をめぐる価値観の変化があります。まずはこの言葉の意味と、どのように広がったのかを見ていきましょう。
「○○キャンセル界隈」から派生したネットスラング
「残業キャンセル界隈」は、2024年頃からSNSで流行した「○○キャンセル界隈」という言葉の派生形。
「風呂キャンセル界隈」「外出キャンセル界隈」など、本来すべきことを「面倒だからやめたい」という、自虐的な気持ちを表現したスラングとして使われてきました。
同じ価値観を持つ仲間を見つけるための合言葉という側面もあり、義務感や社会的な期待から解放されたいという若者の心情を言語化したものでもあります。
「残業キャンセル界隈」も、この流れの延長線上にある言葉。「やらなきゃいけないけれど、できればやりたくない」という本音を、ユーモアを交えて表現しているのです。
定時退社をSNSでシェアする若者たち
「今日、残業キャンセルします!」「無事残業キャンセル成功」──X(旧Twitter)では、こうした投稿が日々シェアされています。
定時になったら仕事が残っていても退勤する。その行動をSNSで報告し、互いに称賛し合うコミュニティが形成されているのです。
20代を中心に広がるこの現象は、従来の「残業は当然」というはたらき方への静かな反発。
SNSで共感と連帯感を得ることで、一人では言い出しにくかった「定時で帰りたい」という気持ちを肯定しているのです。
「静かな退職」との違いは?
「静かな退職」とは、実際に退職をしたり、検討したりするわけではないものの、必要以上に仕事へ情熱を注がずに任せられた業務のみをこなす、いわば省エネタイプのはたらき方のこと。
対する「残業キャンセル界隈」は、勤務時間内の仕事には必ずしも消極的ではありません。むしろ、残業をしないためにより効率的かつ前向きな姿勢を持つ人も。
つまり、仕事に熱意を持たず、最低限の義務だけを果たすのが「静かな退職」。「仕事をしない」のではなく「残業をしない」のが「残業キャンセル界隈」といえます。
データで見る「定時で帰る」リアル
「残業キャンセル界隈」という言葉を聞くと、ごく一部の若者だけの話に思えるかもしれません。でも実際には、多くの社会人が定時で帰ることを意識しています。Job総研の調査データから、定時退社をめぐるリアルな実態を見ていきましょう。
7割以上が「定時上がりを意識している」けれど…

Job総研が全国の20~50代のビジネスパーソン796人を対象に「終業の意識」について尋ねたところ、72.4%が定時で帰ることを「意識している」と回答しました。
年代別に見ると、20代が76.6%でもっとも高く、次いで40代が72.5%、50代が69.9%、30代が68.3%という結果に。若手だけでなく、中堅層の意識も高いことがわかります。
一方、「意識している」と「実際にできている」の間には大きなギャップが。
「実際の終業タイミング」についての設問では、「定時に終業している」と回答したのは全体の60.9%。内訳を見ると、「必ず定時に終業」はわずか16.3%にとどまり、「ほぼ定時に終業」が25.5%。「どちらかといえば定時に終業」が19.1%という結果に。
意識と現実のギャップに、多くの人が悩んでいるようです。
定時で帰れる人、帰れない人の違いは?

同調査では、定時で帰れる理由と帰れない理由についても聞いています。
定時終業できている人の最多理由は、「会社から定時上がりを推奨されている」で50.1%でした。次いで「プライベートの時間を充実させたい」が38.6%、「効率のいいはたらき方を心がけている」が29.7%となっています。
一方、定時で帰れない人の理由は様相が異なります。圧倒的に多いのは「残業しなければ終わらない仕事量がある」で64.3%。「定時に上がれない雰囲気がある」が21.5%、「仕事を任せられる人がいない」が18.3%でした。
この結果から見えてくるのは、定時退社は個人の意識だけでなく、会社の方針や業務量、職場の雰囲気に大きく左右されるということ。「帰りたいのに帰れない」そんな状況に置かれている人が少なくないのです。
なぜ今「残業キャンセル界隈」が広がっているの?
「残業キャンセル界隈」という現象は、突然生まれたわけではありません。背景には、法改正やコロナ禍によるはたらき方の変化、そして出社回帰という新たな課題が複雑に絡み合っています。この動きがなぜ今注目されているのか、社会的な要因を整理してみましょう。
働き方改革にともなう「残業」への意識の変化
2018年に働き方改革関連法が施行され、残業時間の上限規制が法定化されました。2024年には建設業などへも適用が拡大され、社会全体で長時間労働の是正が進んでいます。
こうした流れの中で、「長時間労働は悪」という認識が世間に広く定着。時間外労働の上限規制が定着する中で、残業ありきのはたらき方に馴染みがない層も増えています。
残業があたりまえだった世代と、働き方改革後の世代。両者の価値観の違いが摩擦を生むケースも少なくありません。
コロナ禍を経て「ワークライフバランス」重視の時代へ
新型コロナウイルス禍を経て、テレワークが急速に普及しました。はたらき方の選択肢も大きく広がり、自宅で仕事をする経験を通じ「仕事中心」から「自分らしさも大切にする」時代へと価値観が変化しつつあります。
また、Z世代を中心に「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する傾向が強まる中で、仕事を「生きがい」ではなく「生きるための手段」と捉える人も増加。
可処分時間を自己啓発や副業といった将来のキャリア形成に充てる合理的な戦略を持つ人も増えています。
「残業キャンセル界隈」は、単なる若者の甘えではなく、時代の変化とともに生まれた長時間労働文化への静かな拒絶反応なのかもしれません。
出社回帰により残業が増えた実態も

コロナ5類移行後、多くの企業が出社回帰を進めました。この変化が残業時間にも影響を与えています。
Job総研の調査では、67.2%の人が5類移行前と比べて残業時間が「増えた」と回答。特に出社頻度が増加した人では78.5%にのぼり、出社頻度と残業時間の明確な相関関係が見られました。
回答者のコメントを見ると、「上司が退勤するまでは退勤できない」「オフィスで残業していると仕事を頑張っている雰囲気が出せる」との声も。
こうしたコメントからは、テレワーク時には想定されなかった「雰囲気」による残業が、出社により再び発生している可能性が伺えます。この状況も「残業キャンセル界隈」が注目される一因かもしれません。
賛否両論の「残業キャンセル界隈」。それぞれの言い分は?
「残業キャンセル界隈」をめぐっては、さまざまな意見が飛び交っています。「定時で帰るのは当然」という声がある一方で、「責任感が足りない」という批判も。それぞれの言い分を見てみましょう。
肯定派の意見「定時で帰るのは当然の権利」
労働基準法で定められた法定労働時間は1日8時間・週40時間。定時で帰ることは、法律で保障された労働者の権利です。
プライベート時間の確保は、心身の健康維持に欠かせません。ワークライフバランスは現代社会の重要なテーマであり、長時間労働こそが非効率だという見方もあります。
実際に、「定時で帰れないのは、会社の業務管理に問題がある」という意見も。「残業キャンセル界隈」は、従来の長時間労働文化への健全な反発とも捉えられます。
否定派の意見「仕事への責任感が足りないのでは」
一方で、厳しい意見があるのも事実です。仕事が終わっていないのに帰るのは職務放棄ではないか。状況を無視して定時退社を貫けば、チームで仕事をしている場合、ほかのメンバーに負担がかかってしまいます。
場合によっては評価が下がったり、昇進やキャリアに悪影響が出る可能性も。定時で帰り続けると、難しい案件や重要な仕事を任されなくなり、スキル向上の機会を失うかもしれません。
長時間労働で成果を上げてきた世代にとっては、成長意欲の欠如や甘えに見えてしまう側面もあります。「自分たちの若い頃は」という言葉の裏には、上司世代の抱える不公平感ややりきれなさが潜んでいるのかもしれません。
「残業キャンセル」に迷っているなら。自分にぴったりの「はたらき方」を診断
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「残業キャンセル」する前に知っておきたい法律の話
感情的な議論になりがちな「残業キャンセル」ですが、法的にはどう考えればいいのでしょうか。労働法の観点から整理しておくことで、自分の立ち位置を冷静に判断できるかもしれません。会社の権限、労働者の権利、そして評価への影響について見ていきましょう。
原則として、会社には残業を命じる権限がある
労働基準法では、法定労働時間を超える労働(残業)は原則として禁止されています。
しかし、36協定を締結していて、かつ就業規則・労働契約に根拠がある場合には、会社は従業員に残業を命じることができます。
業務上の必要性(合理的理由)があれば、労働者には残業命令に従う義務が発生するため、正当な残業命令であれば「キャンセル」することはできません。
ただし、これは無制限に残業を強いていいという意味ではなく、36協定で定められた上限の範囲内に限られます。
残業を断ることができるケースもある
では、残業を断ることができるのはどのようなケースなのでしょうか。具体的なケースとしては、次のようなものが挙げられます。
- 36協定が締結されていない違法な残業
- 育児・介護などで請求した場合のやむを得ない事情
- 健康上の問題がある場合
- パワハラなど不当な目的での命令
- 36協定の上限を超える過度な残業
特に育児・介護については、法律で時間外労働の制限や免除が定められています。健康上の問題がある場合も、医師の診断書などがあれば配慮を求めることが可能。
長時間労働が強制されている場合には、労働基準監督署や弁護士への相談も検討しましょう。
参照:
働き方改革推進支援センター | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省
e-Gov 法令検索|労働基準法|第三十六条
単に「定時で帰る」だけで評価が下がるのは問題かも
正当な業務命令としての残業を繰り返し拒否すれば、評価が下がったり懲戒処分の対象になる可能性はゼロではありません。
ただし、単に定時で退社することを理由に露骨に評価を下げたり、昇進させないといった対応は、状況によっては不利益変更やパワハラとみなされる可能性も。
重要なのは「成果」が出ているかどうか。定時内で求められる成果をきちんと出していれば、残業しないこと自体は問題にならないはず。
成果を出しているのに残業しないだけで不当に評価を下げられた場合、それは会社側の問題として声を上げる必要がありそうです。
自分らしいはたらき方を見つけるための3つのヒント
残業に対する考え方は一つではなく、人それぞれ。ここでは、自分らしいはたらき方を考えるためのヒントを3つ紹介します。
まずは「なぜ残業しているのか」を整理してみる
本当に業務上必要な残業なのか。業務量が多すぎるのか、それとも効率の問題なのか。「定時に上がれない雰囲気」で何となく残っているだけではないか。上司の顔色を伺って残業しているだけではないか──。
残業にまつわるモヤモヤを解消するには、まずこれらをクリアにすることが大切。
自分の残業の「理由」を客観的に見つめてみることで、自分が本当はどうしたいのかが自然と浮かび上がります。
本当に必要な残業なら堂々と残ればOK。そうでないなら変える選択肢もアリ。自分の状況をしっかりと把握することが第一歩です。
「定時で帰りたい理由」を明確にしてみる
定時で帰りたいのに帰れない、そんな状況が続いているのなら、「定時で帰りたい理由」を整理して同僚や上司へ周知するのもおすすめ。
家族と過ごす時間、自己投資のための勉強、趣味の時間、健康問題など。理由が明確だと、残業しないスタンスも周囲に受け入れられやすくなります。
理由が明確であれば、残業をしないことに対する罪悪感も減ります。自分の時間を何に使いたいのか、一度じっくり考えてみましょう。
職場でのコミュニケーションを大切に
「残業キャンセル界隈」についてネガティブなイメージがつきまとうのは、一方的に帰ってしまうイメージがあるからです。
しかし、周囲と積極的にコミュニケーションをとり、良好な関係を築けていれば、残業をしないことが問題になるリスクはほとんどありません。
たとえば、業務の進捗状況をこまめに報告し、必要ならば引き継ぎをする。日頃から勤務時間内で成果を出す努力をする。「今日は定時で帰ります」と一言伝える。それだけでも印象は変わります。
「残業キャンセル界隈」が組織に受け入れられるかどうか。それは結局のところ、信頼関係次第なのかもしれません。
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「残業キャンセル界隈」は新しいはたらき方のカタチかも?
「残業キャンセル界隈」そのものについて、良い悪いの単純な答えはありません。
大切なのは、周りに流されるのでも我慢し続けるのでもなく、自分で選ぶこと。定時で帰りたいなら、その理由と覚悟を持って。残業が必要だと感じるなら、それも自分の選択として認めましょう。
はたらき方の価値観は多様化しています。「自分はどうはたらきたいのか」「何を大切にしたいのか」。焦らず、少しずつ。自分らしいはたらき方を見つけていけたらいいですね。









