2025.11.28

妻のほうが収入が多いとうまくいかない? 揺れる役割分担と「見えない負担」

「妻のほうが収入が多い」という状況に、うっすらとしたモヤモヤを感じる人は少なくありません。この記事では、「収入が逆転したら家事分担も変えるべき?」「稼いでいる側が偉いの?」そんな夫婦の”役割”と”収入”の葛藤を、データと共に紐解きます。

「妻のほうが収入が多い」と気になるのはなぜ?社会に残る”役割意識”

「妻のほうが収入が多い」と聞いて、なぜか落ち着かない気持ちになった経験はありませんか?

長い間、日本社会では「男性が稼ぎ、女性が家庭を守る」という役割分担が当たり前とされてきました。その常識は、いまだわたしたちの意識の中に根強く残っています。

現在は、まさに男女の関係性の過渡期。共働きが増え、女性の社会進出が進み、価値観も多様化しているなかで、収入の逆転が「気になる」のは自然なこと

まずはその感覚を否定せず、受け止めることから始めましょう。

共働きが当たり前の時代。それでも根深い「家事は女性」の意識

共働き世帯が増え、夫婦で家計を支え合うのが当たり前になった現代。それでも家事や育児となると、「女性がやるもの」という意識が社会に深く残っています。

ここでは、家事にまつわる男女の意識について、Job総研の調査をもとに解説します。

共働きだけど…「男性が多く担うのは違和感」が69.4%

Job総研が実施した「2025年 共働き意識調査」によると、「共働き生活の家事育児分担割合」について、「男性が多く担うのは違和感がある」と答えた人は69.4%。一方で、「女性が多く担うのは仕方ない」と答えた人は56.6%でした。

つまり、多くの人が「男性が家事育児のメインを担う」ことには抵抗を感じる一方で、「女性がメインを担う」ことは受け入れやすい傾向があります。

この非対称性は、社会に残る「家事育児は女性の役割」という価値観を裏付けるもの。共働きが増えても、性別役割分担の意識が色濃く残っていることが再確認される結果となりました。

「収入差で家事育児負担を変えること」賛成が60.2%

では、収入の差によって家事育児の分担を変えることについて、世論はどうなっているのでしょうか。

同調査によると、「収入差で家事育児分担を変えること」に賛成する人は60.2%。男女別で見ると、男性が64.9%、女性が51.6%と、男性のほうが賛成派が多い結果となりました。

賛成する理由としてもっとも多かったのは「稼ぐ方が仕事に集中した方がいい」で47.7%。次いで「効率よく家庭を回せる」が31.2%、「時間、体力差での分担が合理的」が29.7%と続きます。

ロジックとしては納得できる意見。収入が多い人が仕事に専念し、少ない人が家事を多く担うというのは、一見合理的に見える考え方です。

「責任は収入に関係なく共有すべき」という声も

一方で、反対派の声にも耳を傾ける必要があります。

反対理由としてもっとも多かったのは「責任は収入関係なく共有」で49.4%。次いで「収入差での分担は不満が出る」が44.9%、「両者が両立意識を持つべき」が43.8%となりました。

収入の多い少ないで役割を線引きすることに対して、「家庭は効率だけで回るものではない」「収入に関係なく、二人で共に育て、共に支え合うべき」という価値観を持つ人も少なくありません。

男女の収入格差と“はたらき方の選択肢

「妻のほうが収入が多い」という状況は、まだ少数派なのが現実です。とはいえ、女性のはたらき方は確実に変化しており、キャリア志向を持つ女性も増えています。ここでは、男女の収入差の実態と、変わりつつある女性のはたらき方への意識を見ていきましょう。

男女の賃金差の現状

厚生労働省が公表した「令和6年 賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の月収は男性が363.1千円、女性が275.3千円となっています。男女間賃金格差は75.8(男性を100とした場合)。つまり、女性の賃金は男性の約4分の3という状況です。

この数字が示すのは、「女性のほうが収入が多い」というケースは、統計的にはまだ少数派だということ。

構造的な賃金格差が残る中で、妻のほうが高収入という状態は、ある意味で”例外”と見なされがちです。だからこそ、周囲の目や言葉が気になったり、夫婦間でも戸惑いが生まれやすいのかもしれません。

それでも「家庭より仕事を優先したい」女性は増えている

女性のはたらき方への意識は確実に変化しています。

Job総研が実施した「2022年 女性のワークライフ実態調査」では、結婚後もはたらきたいと答えた女性は74.1%に上りました。出産後もはたらきたいと答えた女性は76.6%で、多くの女性が結婚や出産後もキャリアを継続したいと考えていることがわかります。

興味深いのは、パートナーに対する考え方。「パートナーに求める価値観」として、「家庭を優先してほしい」と答えた女性は69.8%でした。これは、自分自身も仕事を続けたいからこそ、パートナーにも家庭へのコミットメントを求めていると解釈できます。

女性が一方的に家庭を担うのではなく、夫婦で協力し合いながら、共に仕事も家庭も大切にしたい。そんな価値観の変化が表れた結果となっています。

片方だけが負担する関係は、どちらにとっても長くは続かない

収入の多い側が仕事に専念し、少ない側が家事育児を一手に引き受ける。一見すると効率的に見えるこの形ですが、すべての家庭にとってベストとは限りません。

稼ぐ側は「自分が家計を支えているのだから」とプレッシャーを感じ、家事育児を担う側は「自分だけが我慢している」と不満を募らせる。この関係は、ともするとお互いへの感謝を忘れてしまいがち。気づいたときには、埋めることのできない深い溝ができてしまっていることも。

大切なのは、その時々の状況に応じて柔軟に役割を見直し、お互いの負担を分かち合うこと。完璧な平等ではなく、互いに支え合える関係こそが、長く続く夫婦の形なのかもしれません。

妻のほうが収入が多いことで起こる“夫婦の葛藤”

妻のほうが収入が多くなったとき、直面するのが「家事分担も変えるべきなのでは?」という問いです。ここでは、収入差と家事分担にまつわる葛藤の正体を深掘りします。

収入で家事を線引きすると起きる“感情”のすれ違い

一般的な仕事とは異なり、家事や育児の負担は目に見える形で測ることができません。

特に、献立を考え、子どもの予定を管理し、家族の体調に気を配るといった、いわゆる“名もなき家事”は、目に見えないからこそ不満の種となりがちです。

「なんで自分だけが常に気を配らなきゃいけないのだろう?」「どうして自分の労力は軽く見られるの?」そんな思いが積み重なると、感情に溝が生まれることは避けられません。

収入という数字だけで役割を決めることの危うさが、ここにあります。

無意識の役割期待(ジェンダーバイアス)が衝突の火種に

たとえ妻のほうが収入が多くても、夫が無意識に「家事は妻がやるもの」と期待してしまう。妻もまた、無意識に「家事をやらないと評価されない」「妻としてちゃんとしなきゃ」と自分を追い込んでしまう。こうしたジェンダーバイアスも、夫婦の葛藤を生む大きな原因のひとつです。

問題は、当事者の自覚が薄い傾向にあること。

夫が悪気なく「仕事で疲れているから」と妻に家事を任せる一方で、妻が「家事育児のメインは妻であるべきだから」と自分を追い込んでいるケースは珍しくありません。

“社会の常識”と”家庭の現実”の板挟みになり、どちらもストレスを抱えてしまう。この無意識の役割期待が、妻のほうが収入が多い夫婦の葛藤を生む大きな火種となっています

「収入=価値」と見なされてしまう危険性

収入は目に見える数字。一方で、家事や育児、心のケア、日々の段取りといった「見えない労働」は数字になりません。そのため、「収入が高い=偉い」「収入が低い=価値が低い」という誤解が生まれやすいのが実情です。

収入差を意識しすぎると、稼いでいる側は「主導権を持っている」感覚を持ちやすくなります。逆に収入が低い側は「自分は役に立っていない」という負い目を感じやすい傾向に。

問題は収入差そのものではなく、「収入=その人の価値」と思い込んでしまうこと。お互いの貢献を数字で比べ始めたとき、夫婦の関係に見えない亀裂が走り始めることに……。

関係を守るのは“正しさ”よりも“納得感”

Job総研の「2025年 共働き意識調査」では、「(家事育児を)“女性が担う”という考え方への印象」として、「誰が担うかより納得感が大事」と答えた人が31.4%いました。

これは、「50対50で分担すべき」「収入に応じて分担すべき」という、効率や合理性よりも、お互いの”納得感”を重視する層が一定数存在していることを意味します。

二人が話し合い、それぞれの状況や得意不得意を理解し合ったうえで、「これなら納得できる」という着地点を見つけること。他人の物差しではなく、自分たちの物差しで関係を築いていくことが、長く続く夫婦の秘訣といえそうです。

収入を超えた関係性を育む3つのヒント

では、お互いが納得できる関係を保つには、具体的にどうすればいいのでしょうか。ここでは、日常の中で意識したい3つのヒントをご紹介します。

役割分担は“固定制”ではなく“更新制”で

夫婦の役割分担は、一度決めたら終わりではありません。

仕事の繁閑期、子どもの成長段階、家族の体調、キャリアの転換期など、家庭の状況は常に変化していきます。

こうした変化に無理なく対応するには、今月は妻が仕事で忙しいから夫が家事を多めに。来月は夫の出張が続くから妻がカバーする。そんなふうに、その時々で柔軟に調整していく「更新制」の発想が大切です。

そこでおすすめなのが、3カ月に一度、もしくは半年に一度、お互いの負担感や満足度を確認するルールをつくること。役割を固定せず、柔軟に対応できる関係を維持しましょう。

話し合いをはじめるコツ

家事分担や収入の話は、なかなか切り出しにくいもの。特に不満がある側は、言い方を間違えると責めているように聞こえてしまうリスクがあります。

これを避けるために意識したいのが、「あなたが○○してくれない」ではなく、「わたしは○○で困っている」と、I(アイ)メッセージで伝えること。

「疲れているのはわかる。でも、食器洗いだけは分担できないかな」と、相手の気持ちを受け止めながら具体的な提案をしましょう。「二人でより良い家庭を築こう」という姿勢が伝われば、話し合いはぐっと前向きなものになるはずです。

収入=あなたの価値じゃない。「強み」を知って、余裕をもつ

夫婦間のバランスが崩れると、収入を基準に自分を卑下してしまいがち。とはいえ収入は、決してあなたの価値そのものではありません。今の収入が少ないからといって、あなたの能力が低いわけでも、家庭での存在価値が小さいわけでもないのです。

そこで実践したいのが、客観的な視点から自分の強みを知ること。自分の市場価値を客観的に把握できれば、心に余裕が生まれます。収入に対する過度なコンプレックスや、パートナーへの負い目から解放されるかもしれません。

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自分の価値を知り、自信を持てる人は、パートナーの価値も正しく認められるもの。お互いを尊重し合える関係の第一歩は、まず自分自身を大切にすることから始まるのです。

妻のほうが収入が多い夫婦もアリ!“対等”は収入差で決まらない

妻のほうが収入が多いことは、決して恥ずかしいことでも、問題があることでもありません。大切なのは、収入の多寡ではなく、お互いを尊重し合えているかどうか。夫婦の「対等さ」は、給与明細の数字では測れないものだからです。

社会の常識や周囲の目に振り回されず、二人で納得できる形を探しましょう。夫婦にとっての「ちょうどいい」が、2人にとっての理想の形であるはずです。

参照:Job総研「2025年 共働き意識調査」を実施 | JobQ[ジョブキュー]
参照:Job総研『2025年 共働き意識調査』を実施しました – Job総研プラス
参照:令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
参照:Job総研「2022年 女性のワークライフ実態調査」を実施 | JobQ[ジョブキュー]

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