2025.08.15
人事評価でやる気をなくす原因と対策を調査から解説!モチベーションはどうやって回復する?
人事評価は、はたらく人のモチベーションに大きな影響を与える重要な制度です。しかし実際には、評価制度が原因でやる気を失ってしまう人が少なくありません。人事評価でやる気をなくす原因と、そこから立ち直るための具体的な方法を紹介します。
人事評価でやる気をなくす人は多い?
給与査定や昇進に影響する大事な「人事評価」は、本来なら社員の長所や課題を明確にし、やる気を出させる目的で実施します。
しかし現実には、多くの人が人事評価に対して不満を抱いている状況です。この問題がどの程度深刻なのか、Job総研の調査データとともに見ていきましょう。
評価への不満を感じている人は約8割

Job総研が2023年に実施した調査によると、「会社からの評価に不満を感じたことがあるか」という問いに対し、75.2%の回答者が人事評価に不満を感じていると回答しています。

さらに、78.7%もの人が評価によってモチベーション低下を経験している点にも注目です。
これは約8割の人が、人事評価制度に何らかの課題を感じていることを示しています。
やる気をなくした状態が個人と職場に与える深刻な影響

人事評価への不満がもたらす影響は、個人だけにとどまりません。モチベーション低下は組織全体に広がる悪循環を生み出します。
Job総研の調査では、71.8%が評価を理由に転職を検討し、48.9%が実際に転職したという結果も出ているのです。
優秀な人材の流出は、企業にとって大きな損失となります。採用コスト・研修コスト・引き継ぎコストなど、金銭的な負担も無視できません。
さらに、残った社員のモチベーション低下や業務負荷の増加など、組織全体のパフォーマンス低下が連鎖的に発生するのです。
人事評価でやる気をなくす根本的な原因
人事評価への不満には明確な原因があります。Job総研の調査結果をもとに、主要な原因を詳しく分析してみましょう。

「成果と報酬が見合わない」(51.3%)
最も多くの人が感じているのは、自分の成果と受け取る報酬とのバランスの悪さです。
たとえば、売上目標を大幅に上回ったにも関わらず、昇格や昇給につながらなかった経験はありませんか。また、チームの成果に大きく貢献したはずなのに、個人評価では全く反映されなかったということもあるでしょう。
このような状況が続くと、「どんなに頑張っても意味がないのでは」「頑張るだけ損かもしれない」と感じるようになるかもしれません。
特に「成果を出せば評価される」と思っていたのに、実際はそうではなかったときの落胆は大きいものです。
「評価基準が不透明」(45.6%)
評価基準があいまいだと、どこに向かって努力すればよいのか迷ってしまいます。
よくあるのは、「優秀」「普通」「要改善」といった抽象的な項目だけが示され、具体的にどのような行動や成果が求められているのか全く分からないケースです。「優秀って具体的に何?」と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
さらに困るのは、上司が変わると評価がガラッと変わることです。前の上司には評価されていたのに、新しい上司になった途端に評価が下がってしまう。
このような経験をすると、「結局は上司の好み次第なのかな」と感じてしまいます。
「上司が自分を見てくれていない」(38.5%)
日常的に上司とのコミュニケーションが不足していると、自分の努力や工夫が正当に評価されないと感じてしまいます。
特にリモートワークが増えた今、この問題はより深刻になっています。メールやチャットでの報告だけでは、あなたの頑張りや創意工夫が伝わりにくいのが現実です。画面越しでは見えない努力もたくさんありますが、それが評価されません。
また、普段はほとんど話をしないのに、評価の時期になって初めて詳しい面談をする職場も多いようです。
「もっと早く相談したかった」「普段から話を聞いてもらえていれば」と思った経験がある人もいるでしょう。
「スキル不足・自分の態度が悪かった」(その他回答)
一方で、「自分にも改善すべき点があった」と振り返る人もいます。このように客観的に自分を見つめられるのは、実はとても前向きな姿勢です。
たとえば、業務に必要なスキルが足りなかったり、コミュニケーションのとり方に課題があったりすることに気づいた場合です。また、「チームワークを大切にする職場なのに、一人で進めてしまうことが多かった」といった気づきもあるでしょう。
このような自己分析ができている場合は、具体的な改善策を見つけやすく、次の評価に向けて前向きに取り組むことができます。
やる気をなくした状態から立ち直る方法
人事評価への不満でやる気をなくしてしまっても、適切な対策を取ることで状況を改善できます。具体的な立ち直り方法を見ていきましょう。
日頃から評価のための準備をしておく
まず重要なのは、日頃から準備しておくことです。
Job総研の調査によれば、以下のような準備をしているという回答も見受けられました。
▶︎寄せられたコメント
- 仕事の目的と内容、結果を箇条書きで残しておく。報告書を作成し提出できる準備をしてアピール
自分がどんな仕事をしたのかの客観的な記録は重要です。自分自身の振り返りにもなりますし、上司と話すときも、自分の仕事について具体的に話すことができます。
上司からしても、気づかない成果や工夫に気づくきっかけにもなるでしょう。
評価基準を評価者に確認する
評価基準が不明確な場合は、ただ不満な状況に甘んじるのではなく、上司に確認を取ることが重要です。あいまいな状態のまま業務を続けても、適切な評価を得ることはできません。
JobQの調査でも、以下のような工夫をしているという意見が見られました。
▶︎寄せられたコメント
- 事前に評価方法や評価基準について確認をすべきである。人事考課の時期になってから考えるのでは遅い
- どこまでやったら100%の達成率と評価されるのかを上司と握っておく
上司としても、部下の評価が上がれば自分の査定も上がるため、評価について聞けば答えてくれるでしょう。評価基準が不透明な場合の対応は、次の見出しで解説します。
数値化が難しい評価は別の評価軸で可視化する
営業成績のように数値化しやすい業務ばかりではありません。企画業務・人事業務・総務業務など、成果を数値で表現することが困難な職種も多く存在します。上司が明確な評価基準を持っていないケースも考えられるでしょう。
このような場合は、別の評価軸を用いて自分の貢献を可視化する工夫が必要です。Job総研の調査には、以下のような工夫方法が回答されています。
▶︎寄せられたコメント
- がんばりましたと定性で書かれても、何をどう頑張ったのかが不明で評価しづらい。なんとか定量に持って行こうとする工夫の意欲が見られると、評価者側の心象は変わる
- 私も数値化できない業務です。他者と比較するのが難しいため、前年の自分と比較しアピールします
- 私の場合は工夫した点、自分の強みを活かした点など自分の価値をアピールできることを伝えている
- 色々な方から理解を得られるように、適度に周囲へアピールしていくことも必要
重要なのは、数値化できないからといって諦めるのではなく、創意工夫によって自分の価値を見える化することです。上司にとっても、具体的な事例や成果があることで、適切な評価を行いやすくなります。
まとめ
人事評価でやる気をなくす現象は、多くのはたらく人が経験する深刻な問題です。
主な原因は「成果と報酬が見合わない」「評価基準が不透明」「上司が自分を見てくれていない」といった構造的な問題にあります。これらの問題は組織の体制や評価方法に基づく場合も多く、諦めてしまう気持ちもわかります。
しかし、適切な対策を取ることで状況を改善することは可能です。評価されるポイントの明確化、評価基準の事前確認、数値化困難な業務の可視化といった具体的な行動により、納得感のある評価を得ることができます。
重要なのは、評価制度の問題を嘆くだけでなく、自分でできることから積極的に取り組む姿勢です。
普段から評価を意識した業務の進め方を心がけ、評価者とのコミュニケーションを密にすることで、お互いにとって納得感のある評価制度を構築していきましょう。








